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マウスの食餌性肥満は非遺伝的に受け継がれる

Nature Genetics

2016年3月15日

Non-genetic inheritance of diet-induced obesity in mice

Nature Genetics

マウスにおいて、精子と卵(配偶子)を介して伝わるエピジェネティックな因子によって肥満の両親から生まれた仔が食餌性肥満になりやすいことが分かった。今回の研究は、環境の交絡作用を排除して、エピジェネティックな作用の直接的な役割を明らかにした。

両親は、仔に対して遺伝情報をDNAの形で伝えるだけでなく、一生の間に獲得した遺伝物質のエピジェネティックな修飾(DNA塩基配列を変化させずに遺伝子発現に影響を及ぼす可逆的な改変)を伝えることもある。個体が肥満になるリスクがエピジェネティック因子を受け継ぐことで増加することは、疫学研究とモデル生物研究で示唆されている。しかし、こうしたエピジェネティック因子を受け継ぐ原因が環境条件—例えば、1)妊娠時または授乳時の母親の食餌、2)父親の精液または両親のマイクロバイオームに含まれる分子—なのかどうかは断定されていない。

今回、P Huypens、J Beckersたちの研究グループは、遺伝学的に同一なマウスに対し、6週間にわたって高脂肪食、低脂肪食または通常食を与えた。高脂肪食を与えられたマウスは、予想通り、肥満と耐糖能異常になった。次に、Huypensたちは、異なった食餌を与えられたマウスの精子と卵を組み合わせてさまざまな初期胚を作製し、健康な代理母に移植することで、精子や卵のみに存在するエピジェネティック因子から環境因子を排除した。そして生まれた仔が成体になったところで高脂肪食を与えた。肥満の両親から生まれた仔は、両親の一方のみが肥満の場合よりも体重増が顕著だった。また、いずれの両親も肥満でない場合が、高脂肪食による体重増が最も少なかった。これと類似したパターンが耐糖能異常についても見られ、Huypensたちは、配偶子に含まれるエピジェネティック因子が親から仔へ肥満と糖尿病のリスクが伝わる上で重要な役割を担っていると結論づけている。

doi: 10.1038/ng.3527

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