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【バイオエンジニアリング】魚の口から着想を得た高効率フィルター

Nature Communications

2016年3月30日

Bioengineering: Fish mouths inspire efficient filters

Nature Communications

濾過摂食魚の口の構造から着想した新しい流体濾過機構を用いると、流体の渦流によって粒子を効果的に捕捉でき、この粒子捕捉機構によってフィルター自体のメッシュサイズより小さな粒子も捕捉できる可能性のあることを明らかにした論文が掲載される。この新知見は、流体の効果的な濾過を必要とするさまざまな工業的用途(ビールや乳製品の製造)に利用できる可能性がある。

キンギョやジンベイザメのような濾過摂食魚は、口腔内のフィルターによって食物粒子を捕捉しており、このフィルターは不必要な物質の破片で詰まったりしない。しかし、濾過摂食魚のフィルターが目詰まりを起こさない流体力学過程は、今日まで明らかになっていない。

今回、Laurie Sandersonたちは、ヘラチョウザメとウバザメの口腔内の鰓弓という構造から着想した円錐形のナイロン製モデルを3Dプリンターで作製するように設計した。そして、Sandersonたちは、実験流水槽にこのモデルと3匹のヘラチョウザメの標本の口腔構造を入れて、それぞれの作用を調べた。その結果、このモデルとヘラチョウザメの濾過構造は、流体に渦流を発生させ、それによって食物粒子が捕捉され、目詰まりが防止されることが明らかになった。鰓弓は、骨質または軟骨のアーチで、鰓を支え、特異的な肋骨(いわゆる「d型肋骨」)として機能し、魚の口腔内の水の流れを誘導して、水流や渦流を発生させる。また、この肋骨は小さな粒子を濃縮する上で役立ち、食物の捕捉効率を高めている。

このいわゆる渦流クロスステップ濾過(vortical cross-step filtration)方式は、類似の口腔構造を有する他の濾過摂食魚(例えば、オタマジャクシの鰓弁、アヒルのくちばしの鰓弁、クジラのヒゲ板)にも拡大適用できるとSandersonたちは考えている。今回の研究で得られた新知見は、これまでより効率の高い工業用フィルターの設計に道を開き、効率の高い濾過方式の開発につながる可能性もある。

doi: 10.1038/ncomms11092

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