注目の論文

【生態】親鳥は餌を与えるべきヒナをどのように選んでいるのか

Nature Communications

2016年3月30日

Ecology: How birds choose which chicks to feed

Nature Communications

親鳥がひとかえりのヒナの中から餌を与えるべきヒナを決める時、生息地の環境の質に左右されることを明らかにした論文が掲載される。この新知見は、親鳥が餌を与えるべきヒナを決める際に必要性を伝えるシグナル(例えば、ヒナがどの程度強く餌を求めているのか)と質を伝えるシグナル(例えば、ヒナの体長)のいずれに応答しているのかという生態学の長年の疑問を解消する上で役立つ可能性がある。

鳥類のヒナ育てにおいて、親鳥は、自らのヒナを維持するために十分な量の餌を入手するために大量のエネルギーを消費するが、(例えば北米に生息するミドリツバメのように)餌を最も強く求めるヒナに餌を与えるかどうかは鳥類種によって大きく異なっており、一部の鳥類(例えばガラパゴス諸島に生息するアオアシカツオドリ)は餌を強く求めるヒナを無視して、ひとかえりのヒナの中で体の大きなヒナに餌を与えている。どのシグナルがこの決定を導き出しているのかという点については盛んな論争が行われてきた。

今回、Stuart Westたちは、全世界の143種の鳥類がヒナに餌を与える際のヒナ育ての選好性に関する入手可能な文献(306編の論文)を収集して、こうしたヒナ育ての多様性とヒナの状態と行動との関連性を分析し、それぞれの鳥類種が生息する地域の環境条件の分析も行った。その結果、予測可能で有利な環境にいる親は、ひとかえりのヒナの中で状態が悪く、餌を強く求めているヒナに餌を優先的に与えるが、不利な環境にある親は、同じ巣にいるヒナがどれだけ餌を求めても最も状態の良いヒナに優先的に餌を与えることが判明した。

この研究結果は、生息地の環境条件が、親とヒナの間の情報伝達系の進化に影響を与えることを示しており、環境的多様性を考慮に入れない従来の研究によって鳥類種全体にわたる一貫した行動パターンを同定できなかった理由を説明している。

doi: 10.1038/ncomms10985

英語の原文

注目の論文

「注目の論文」一覧へ戻る

advertisement
プライバシーマーク制度