【栄養】脂肪分の多い食品を好む1つの理由
Nature Communications
2016年10月5日
Nutrition: Why some people prefer fatty foods
脳内の特定の受容体に変異のある人は、それがない人より脂肪分の多い食品を好み、糖分の多い食品を好まない傾向が顕著なことが明らかになった。この結果は、人間の食べ物の好みに特定の神経回路が関与している可能性を示唆している。研究結果を報告する論文が掲載される。
視床下部と脳幹の神経回路は、摂食行動の制御に重要な関与をしている。過去に行われたマウスを用いた広範な研究では、メラノコルチン-4受容体(MC4R)をコードする遺伝子の変異によってメラノコルチンシグナル伝達を阻害すると、食物の過剰摂取が起こり、マウスが脂肪分の多い食品を好むようになり、糖分を好まなくなることが明らかになった。しかし、この知見が人間の摂食行動の制御にどの程度関連するのかは分かっていなかった。
今回、Ismaa Farooqiたちは、メラノコルチンシグナル伝達の欠損をもたらすMC4Rのまれな変異を有する被験者(最大14人)の食べ物の好みを調べて、痩せ型と肥満型の被験者と比較した。この研究では、脂肪分が高、中、低レベルに設定された3種類の食事が提供され、被験者は自由に選んで食べることができた。被験者は、脂肪分に差があることを知らされておらず、実験後の面接でも脂肪分に差があったという話をしなかった。それぞれの被験者による3種類の食事の外観、食感、味に基づく「好き嫌い」の格付けに大きな差はなかったが、MC4Rの変異を有する被験者の高脂肪食の摂取量は、痩せ型の被験者より95%多く、肥満型の被験者より65%多かった。一方、デザートの「好き嫌い」の格付けでは、MC4Rの変異を有する被験者が糖分の非常に多いデザートを好まないことが有意に認められた。
以上の知見は、食べ物の好みにおけるMC4Rの役割を裏付ける初めての証拠であり、特定の神経回路におけるメラノコルチンシグナル伝達といろいろな種類の食品の好みの間の直接的な関連を示唆している。
doi: 10.1038/ncomms13055
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