【社会学】音の好みは文化によって形作られている
Nature
2016年7月14日
Sociology: A cultural basis for musical preference
不協和音よりも協和音を好むかどうかは、聴覚系の固有の形質ではなく、個人の音楽体験によって決まるという実験結果を報告する論文が、今週掲載される。
西洋文化には、快い音(協和音)と不快な音(不協和音)と感じ取られる特定の音符の組み合わせがある。協和音と不協和音の美的対比は生物学的に決まっており、全ての人に共通なものと考えられることが多い。しかし、この考え方は、西洋音楽を聴いたことのない集団で検証されていなかった。
今回、Josh McDermottたちは、西洋文化にほとんど触れたことのないアマゾン川流域の先住民であるチマネ族の社会に属する64人の音の好みを測定し、西洋音楽との接触の程度が異なる米国の集団(23人の音楽家と25人の非音楽家)とボリビアの集団(50人の都市住民)の音の好みと比較した。また、McDermottたちは、この実験結果を再現し、拡張するため、チマネ社会の別の49人と米国の音楽経験の豊かな47人(対照集団)で実験を行った。被験者にはヘッドホンを着用させ、音(和音または声のハーモニー)を聞かせて、快いと感じるかどうかを4段階で評価させた。その結果、チマネ社会の被験者は、協和音と不協和音を同じように快いと評価したのに対して、ボリビアの都市住民は協和音の方を好んだが、その度合いは、米国の住民ほど高くなかった。
また、McDermottたちは、笑い声、喘ぎ声などの聞き慣れた音と耳障りな程度の異なる複数の合成音に対するチマネ社会の被験者の反応も調べたが、チマネ社会の被験者の判定結果は欧米人と類似していた。音を聞き分ける能力の点と聞き慣れた音と耳障りな音に対する美的反応の点では、チマネ社会の被験者と欧米人との間に差がないことが示唆されている。
以上の知見は、協和音を好む原因が、聴覚系の生物学的性質ではなく、特定の種類の多声音楽(今回の研究では西洋音楽)の体験であることを示唆している。
doi: 10.1038/nature18635
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