【ウイルス】抗体カクテルの投与によってサルのSHIV感染を遅らせる
Nature
2016年4月28日
Virology: Antibody cocktail delays HIV infection in monkeys
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)を標的とする抗体をサルに1回注射すると、サル-ヒト免疫不全ウイルス(SHIV)の予防効果がほぼ6か月持続することを報告する論文が、今週掲載される。今回の研究では、HIV-1伝播のリスクが高い集団におけるHIV-1伝播に大きな影響を与える可能性のあるHIV-1予防法の概念実証が行われた。
サルに一度に大量のHIVやSHIVを攻撃接種する実験で、その1~2日前にHIV-1感染者に由来する抗体を注射しておくと、ウイルス感染の予防となることが実証されている。しかし、この受動免疫療法の長期的有効性を調べる研究は行われていない。
A型肝炎に関しては、有効なワクチンが利用できるようになるまでの数か月間、受動免疫療法によって予防効果が得られるが、今回、Malcolm Martinたちは、この考えに基づいて、これと似た予防効果を強力な抗HIV抗体の単回投与によって長期間持続させられるかどうかを調べた。9匹のマカクザルからなる対照群においてHIVのヒト間伝播のシミュレーションが行われ、感染までの平均期間が3週間とされた。次に、6匹のサルからなるグループ(3グループ)に異なる3種類の抗体を投与してから週1回のSHIVの攻撃接種を実施した。抗体を投与された3グループともウイルス感染が遅れ、予防効果は最長で23週間だった。予防期間は、抗体の有効性と半減期と直接関連していた。また、最も有効性の低い抗体については、アミノ酸変異を導入することで半減期を延長できることも判明した。
Martinたちは、これらの抗体の組み合わせを用いて、耐性HIV-1株の伝播を阻止する全般的な能力を高めることが可能だと考えている。ただし、これが、ヒトにおいてHIV-1ワクチンに代わる方法として有望なのかどうかを断定するには今後の研究の積み重ねが必要とされる。
doi: 10.1038/nature17677
注目の論文
-
7月11日
古代ゲノミクス:疫病に襲われた新石器時代の農民たちNature
-
7月10日
バイオテクノロジー: 培養肉の風味を改善するNature Communications
-
7月9日
微生物学:自閉症スペクトラム障害は子どもの腸内細菌叢の変化と関連するNature Microbiology
-
7月9日
ウイルス学:牛H5N1インフルエンザの感染と伝播Nature
-
7月4日
考古学:チベット高原でデニソワ人が活動していたことを示す動物の骨Nature
-
7月4日
古生物学:オオサンショウウオに似た捕食動物Nature