【市民科学】ゲーマーが量子物理学の問題を解く
Nature
2016年4月14日
Citizen science: Gamers solve quantum physics problems
アルゴリズムだけでは容易に解けない量子物理学の問題をオンラインコンピューターゲームのプレーヤーが解いていることを報告する論文が、今週掲載される。市民科学ゲームは、タンパク質の折りたたみとニューロンマッピングなどの科学的活動を推進する上ですでに成功を収めているが、量子物理学に応用されたことはなかった。
量子計算に関連した演算は、機能性を確保するために、実行時間を非常に短くすることが必要とされるが、実行時間が短すぎると、演算の精度が低下することがある。今回、Jacob Shersonたちは、Quantum Movesというオンラインゲームプラットフォームを開発した。Quantum Movesでは、こうした演算の一部がゲームになっており、すでに約10,000人のプレーヤーによって約50万回プレーされている。そうしたゲームの1つであるBringHomeWaterでは、量子計算演算に関連する最適化問題の解を見つけるため、ユーザーは原子を集めて、目標領域にできるだけ速く動かすことが求められる。このゲームのユーザーは、原子を動かすために、強く集束されたレーザービーム(いわゆる「光ピンセット」)を用いる。「(コンピューター画面上に水として描かれた)原子を速く動かそうとすると、取りこぼしが起こりやすくなる。従って、プレーヤーは、取りこぼしを起こさずに原子を最も速く『持ち帰る』方法を見つけなければならない」と同時掲載のNews & Views記事でSabrina Maniscalcoが説明している。
Shersonたちは、純粋な数値最適化手法ではうまくいかないのに、このゲームのプレーヤーが成功を収めていることを明らかにし、著名で定評のある数値最適化手法より良い結果が得られるプレーヤーの戦略に基づいた新しい最適化手法を示している。今回の研究結果は、ゲーミフィケーション(ゲーム以外の状況下でゲームの要素を応用すること)が量子物理学の分野で複雑な問題を解決する上で有効な道具となることを確認している。
doi: 10.1038/nature17620
注目の論文
-
12月24日
進化:ほかのチンパンジーよりもナッツ割りが得意なチンパンジーがいるNature Human Behaviour
-
12月24日
考古学:植民地化以前のアマゾンの住民は「田園都市」でアヒルに餌を与え、トウモロコシを食べていたNature Human Behaviour
-
12月13日
Nature Medicine:2025年の医療に影響を与える11の臨床試験Nature Medicine
-
12月13日
進化:最古の現生人類ゲノムから、4万5,000年前にネアンデルタールとの混血があったことが判明Nature
-
12月12日
進化:ワニはどのようにして皮膚を得たのかNature
-
12月12日
天文学:Firefly Sparkleが初期の銀河形成に光を当てるNature