注目の論文

ドリアンの強烈なにおいの原因に迫る

Nature Genetics

2017年10月10日

What makes the durian fruit stink?

Nature Genetics

果物のドリアンのゲノム配列が完全に解読された。ドリアンの独特な味とにおいをもたらす遺伝子や代謝過程を分子レベルで解明していく手段が得られたことになる。

熱帯産果実のドリアン(Durio zibethinus)は、独特な風味と強烈なにおい(タマネギと硫黄にたとえられることが多い)のため、珍味と賞される。今回、Bin Tean Teh、Patrick Tanたちの研究グループは、1分子DNAシークエンシングと染色体の足場を構築する補完的な技術を用いて、ドリアンの「猫山王」と呼ばれる品種の果実の茎を材料にして、高品質のゲノム参照配列を組み立てた。また、近縁植物(カカオ、綿を含む)との比較解析では、古い時代にドリアンに全ゲノム重複事象が起こり、綿にも同じ事象が起こった可能性があることが明らかになった。また、Tehたちは、果実の成熟期における遺伝子発現を解析し、硫黄代謝遺伝子の活性レベルは、果実器官のほうが非果実器官よりも高いことを明らかにした。さらにドリアンでは、揮発性硫黄化合物の生合成に関与する遺伝子のコピー数が近縁種に比べて多く、進化過程でのこの増幅が、ドリアンの果実のにおいの基盤になったことが示唆された。

ドリアンは、種や栽培品種によって味の特徴と刺激性の度合いが異なる。ドリアンのゲノム塩基配列と硫黄代謝遺伝子の解析は、こうした特徴を解明する手掛かりとなり、ドリアン産業にとって重要な資源となるだろう。

doi: 10.1038/ng.3972

英語の原文

注目の論文

「注目の論文」一覧へ戻る

advertisement
プライバシーマーク制度