注目の論文
複合糖質ワクチンの解明
Nature Medicine
2011年11月21日
Understanding glycoconjugate vaccines
T細胞は、免疫系の主要組織適合性複合体(MHC)分子が提示するペプチドに結合していれば、多糖類をも認識できるとの報告が寄せられている。これまで、T細胞はMHC分子が提示するペプチドだけを認識すると考えられていたが、この発見で前提が変わるため、現在の複合糖質ワクチンの設計に関係してくる可能性がある。 複合糖質ワクチンは、肺炎の原因となる肺炎連鎖球菌Streptococcus pneumoniaeなど、重要な病原性細菌に対抗するために開発され、効果が上がっている。この種のワクチンでは、担体タンパク質に細菌表面由来の多糖類を連結させてあり、T細胞はタンパク質部分を認識して、B細胞の働きを助けて多糖類に対する抗体応答を促進する。 D Kasperたちは、現在の複合糖質ワクチンの設計の改善方法を研究する中で、T細胞が複合糖質の多糖類部分をも認識することを発見した。Kasperたちはこの発見を利用して複合糖質ワクチンの設計の最適化を図り、このワクチンが、B群連鎖球菌の致命的感染から新生マウスを守るのに有効なことを示した。これらの知見から示唆されるように、ペプチドだけでなく糖質をも認識するT細胞の認識能力を活用すれば、ワクチンの効果を上げられるかもしれない。
doi: 10.1038/nm.2535
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