注目の論文

社会的相互作用を構造化する魔女

Nature Human Behaviour

2018年1月9日

Witchcraft beliefs structure social interactions

Nature Human Behaviour

中国南西部のある村落では、魔法の使い手(中国語で「zhu」と呼ばれる)のレッテルを貼られることが、結婚の相手、協力の対象、世帯間の取引などに影響を及ぼし得ることが、今週掲載される論文で明らかになった。このようなレッテル貼りは、競争相手となり得る者に対して悪意を示すように機能している可能性がある。

「魔女である」と名指しするといった、個人を仲間外れにするような否定的なレッテルには、人間社会において長く広範囲に及ぶ歴史があるが、その社会的な機能はよく分かっていない。魔女のレッテルは、レッテルを貼られた者が信用できない人、あるいは協力的でない人であるという印をつけるために使われていると示唆する研究もあれば、そうしたレッテルは、競争相手の意志をくじくように機能していると指摘する研究もある。現時点では、どちらの説が正しいかを判断するための定量的なデータはほとんどない。

Ruth Mace、Ting Ji、Yi Taoたちの研究グループは、中国南西部に住むモソ族の5つの村の800世帯を対象に、インタビューおよび贈り物を使う実験を行った。モソ族では、世帯主である女性およびその娘たちは、周囲の人々によって、超自然的な力を備えていて、食中毒に関わる者であると見なされると「zhu」と呼ばれる。研究グループは、世帯間の社会的相互作用を視覚的に再構成することで、「zhu」と非「zhu」にはっきりと分けられる世帯間の社会的ネットワークの存在を見いだした。zhuの世帯は多くの場合、近親結婚が避けられ、また非zhu集団との間において農作業の協力がなされない。zhuの世帯はむしろ結婚や労役交換を、小規模なサブネットワークの中で優先的に互いにやりとりしている。今回、研究グループが、zhuの世帯が経済ゲームにおいて他の世帯と同程度に協力的であることを見いだした点は重要である。というのも、この結果から、「zhu」というレッテルが、〈協力的でない、あるいは信頼できない世帯である〉という印をつけるために用いられているのではないことが示唆されるからである。

研究グループは、魔女であるというレッテル貼りは、家系の繁栄や資源の確保に関して、競争相手の名を汚すことで競争上の優位性を得るための方法として進化してきた可能性があると示唆している。

doi: 10.1038/s41562-017-0271-6

英語の原文

注目の論文

「注目の論文」一覧へ戻る

advertisement
プライバシーマーク制度