【古生物学】初期鳥類のくちばしを調べたユニークな研究
Nature
2018年5月3日
Palaeontology: Unique peek at early bird beak
くちばしを持つ初期鳥類の極めて良好な保存状態の化石が新たに発見され、鳥類から恐竜類への移行が予想以上に複雑な過程であったことを明らかにした論文が、今週掲載される。
鳥類の頭蓋骨は、その祖先の恐竜類とはかなり異なっている。現生鳥類は、歯のない大きなくちばしを持ち、頭蓋が大きく、閉口筋は弱体化し、頭蓋骨の連接構造は顕著で、口蓋を動かすことができ、顎がぶら下がっている。こうした特徴が発生する過程と順序を解明することは研究課題となっているが、鳥類の頭蓋化石の保存状態が通常は良好でないために難題となっている。
今回、Bhart-Anjan Bhullarたちの研究グループは、新たに発見された初期鳥類Ichthyornis disparの4点の化石について詳細に調べた。I. disparは、歯を持つアジサシ似の海鳥で、翼幅は60 cm、現在の北米にあたる地域で1億年~6600万年前に生息していた。Ichthyornisは、化石記録において独特な位置付けがなされており、現生鳥類と近縁関係にある一方で、祖先種の特徴(例えば、先の曲がった鋭い歯)が数多く残っている。Ichthyornisの化石は、1870年に最初に発見されたが、この化石試料の頭部は不完全で、ひどくつぶれており、それ以降は新たな頭蓋骨が発見されていなかった。今回発見された頭蓋骨は、保存状態が良好で、三次元形状が保持されており、並外れて完全な頭蓋骨が1個含まれていた。また、Bhullarたちは、最初に発見されたIchthyornisの化石試料に関して、2つの要素が見落とされていたという予想外の報告をしている。
Bhullarたちは、三次元スキャンによってI. disparの頭部を再現した。Ichthyornisの頭蓋骨は、恐竜のように、大きな閉口筋のための穴が開いていたが、全体的には、大部分が現生鳥類のようで、顕著な連接構造があり、顎先に小さな原始的なくちばしがついている。これらの特徴のため、腕が翼になった後でも羽繕いや物体操作ができたと考えられ、現生鳥類の摂食器官がこれまで考えられていた時期より早く進化していたことが明らかになった。
doi: 10.1038/s41586-018-0053-y
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