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【考古学】オリーブの木の枝はサントリーニ火山の噴火時期をめぐる論争を解決していないのかもしれない

Scientific Reports

2018年8月10日

Archaeology: Olive branch may not settle argument of Santorini eruption date

Scientific Reports

サントリーニ火山の噴火時期を決めるために用いられたオリーブの木の枝が、実際の噴火より40~50年前のものだった可能性のあることを報告する論文が、今週掲載される。

サントリーニ火山の噴火は、青銅器時代の地中海における年代順配列を整合させるための固定点となっているが、この火山噴火の時期を正確に決定することは難しかった。最近、サントリーニ火山の岩石破片の中に埋もれていたオリーブの木の枝を用いた年代測定が行われ、その噴火時期が紀元前1627~1600年とされ、紀元前1500年とする考古学者たちのそれまでの学説を1世紀以上さかのぼることになった。この年代測定は、オリーブの枝の最も外側の年輪が火山噴火によって生きたまま埋もれる直前に形成されたという前提に立っていた。

今回、Elizabetta Boarettoたちの研究グループは、オリーブの木の枝の最も外側の年輪が形成されるのは木が死滅する直前なのかどうか、そして、この年輪を信頼性の高い年代測定に利用できるかどうかを評価するため、オリーブの現生種の木の幹から採取した試料20点と、2013年に伐採された枝から採取した試料11点について、放射性炭素濃度分析を行った。その結果、いずれの試料群においても、樹皮に最も近い層から採取された試料の年代測定結果に最大40~50年の幅があることが判明した。この研究知見から、オリーブの木において、目視で確認できる年輪が系統的に形成されないこと、そして、同じ木の中で死滅時よりもかなり前に成長が停止してしまう部分があるという現象が一般的であることが示唆される。

今回の知見は、サントリーニ火山で発見されたオリーブの枝の年代測定によって得られる結果の解釈に異を唱えるもので、エーゲ海、エジプト、およびレバント地方の考古学史にとって重要なだけでなく、考古学的に保存されたオリーブの木を用いる今後の研究にとっても重要となる可能性がある。

doi: 10.1038/s41598-018-29392-9

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