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【植物科学】重要因子のバランスを考慮してエリート種の作物を育種する

Nature

2018年8月16日

Plant sciences: Breeding the top of the crops

Nature

現行品種の高収量を維持しつつ肥料の利用効率を高めたエリート種の作物を育種する方法について報告する論文が、今週掲載される。この研究知見は、植物の窒素代謝過程の詳しい解明に基づいており、持続可能な食料安全保障の達成を目指した活動に役立つ可能性がある。

1960年代のいわゆる「緑の革命」は、農作物の収量を増やし、食料不足を緩和した。当時開発された作物品種は、通常以上の収量をもたらしたが、その原因は、成長を意図的に阻害したことで丈の低い作物となり、風や雨になぎ倒されるリスクが低下したからだ。現代のイネとコムギのエリート種も準矮性の傾向を保持している。

一方、こうしたエリート種の作物は、窒素の利用効率が低いが、これは成長阻害タンパク質DELLAの明確な副作用とされる。「緑の革命」品種において、DELLAの分解作用は阻害されていた。この欠点を補うため、環境に優しくない窒素系肥料を大量に施用する必要があった。これに対して、穀物の窒素利用効率の基盤となる機構については解明が進んでいない。

今回、Xiangdong Fuたちの研究グループは、「緑の革命」品種のイネにおける窒素取り込みの差異を調べた。その結果、窒素取り込み量とDELLAと逆の効果を有する成長調節転写因子GRF4をコードする遺伝子との関係が明らかになった。GRF4とDELLAは、バランスよく存在することで、作物の生育と窒素代謝を調節しているのだ。Fuたちは、GRF4の発現量を増やすことで、準矮性と高収量という従来の特徴を維持しつつ窒素利用効率を高めた「緑の革命」品種のイネとコムギを育種できることを実証した。

doi: 10.1038/s41586-018-0415-5

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