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【生態学】将来の食事に備えた魚類種の栄養含有量の予測

Nature Communications

2018年9月26日

Ecology: Fishing for our future diets

Nature Communications

これまで研究の進んでいなかった魚類種の栄養含有量を予測する方法を記した論文が、今週掲載される。海水魚の栄養学的プロファイルは、全体のほんの一部についてしか分かっておらず、今回の研究では、人間の将来的な栄養必要量を充足し得る条鰭類魚類が同定された。

魚類は、タンパク質や脂肪、さまざまなビタミン類など必須の食品化合物をもたらすが、これらの化合物の含有量は種によって大きなばらつきがあるため、人間の食事にもたらす可能性のある価値は種によって大きな差が生じる。しかし、このような栄養含有量を実験室環境で調べる研究は、非常に高コストな検査が必要なこともあり、一部の魚類でしか実施されていなかった。

今回、Bapu Vaitlaたちの研究グループは、十分な栄養データのある条鰭類371種において、近縁性の高い魚類ほど栄養学的プロファイルの類似性が高くなる傾向のあることを明らかにした。次にVaitlaたちは、この情報に基づき、進化史に関する情報と、種間関係とその他の変数(生息地選好性、地理的分布)との関連性に関する情報を用いて、研究の進んでいない他の条鰭類約7500種の栄養含有量を予測した。この方法により、さまざまな必須栄養分の将来的に有望な供給源となり得る魚類が明らかになった。例えば、Vaitlaたちは、トビウオ、カマス、およびアカメが高タンパクだと予測している。ただしタンパク質含有量は、それぞれの魚類につき1種しか測定できていない。

Vaitlaたちは、今回の知見が、商業利用できる新たな魚類種の提案に用いられるべきではない、と注意を呼び掛けている。今回の知見はむしろ、栄養的価値があるためにさらに研究を続けるのが妥当と考えられるのがどの魚類なのかという情報をもたらし得る。こうした予測結果は、国民が栄養欠乏状態にあり、実験室で広範な検査を行うのが難しいことで知られる開発途上国にとって、特に貴重なものとなる可能性がある。

doi: 10.1038/s41467-018-06199-w

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