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【神経科学】長期にわたる麻痺の後に呼吸調節機能を回復したラット

Nature Communications

2018年11月28日

Neuroscience: Breathing control restored in rats after long-term paralysis

Nature Communications

脊髄損傷を受けてから長い期間(最長1年半)が経過したラットに対して酵素を注射する治療を実施したところ、呼吸調節が回復したことを報告する論文が、今週掲載される。

呼吸障害は、脊髄損傷後の死亡や能力障害の主要な原因である。呼吸筋を制御する神経繊維は、脊髄損傷後に結合しなくなることが多く、結合していない神経の周囲には瘢痕組織が徐々に形成され、再生医療による神経の再結合の試みを阻む。これまで、こうした神経繊維は、脊髄損傷直後に再結合されなければ、急速に死滅すると考えられていた。

今回Philippa Warrenたちの研究グループは、ラットを用いた実験で、呼吸に関与するニューロンが存在する脊髄の領域にコンドロイチナーゼABCという酵素を注射したところ、脊髄損傷後に長い期間を経て形成された瘢痕組織が効率的に分解されることを明らかにした。瘢痕組織が除去された後にはロバストな神経発芽が起こり、ほぼ一生(最大1年半)にわたって呼吸麻痺状態にあったラットが、最終的にほぼ完全な呼吸調節ができるまでに回復した。また、酵素の注射に加えて低酸素条件下に断続的におくと(実験室内で酸素濃度を低下させる時間帯を設定して断続的に曝露した)、回復が増進され、回復状態は治療後最大6か月にわたって維持された。

Warrenたちは、回復過程が生じた機構を正確に解明するために、さらなる研究を進めていると述べている。

doi: 10.1038/s41467-018-06937-0

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