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ニューロフィードバックのトレーニングは、兵士のストレスへのレジリアンスを高める可能性がある

Nature Human Behaviour

2018年12月11日

Neurofeedback training may enhance resilience to stress in soldiers

Nature Human Behaviour

ニューロフィードバックプロトコルによって自身の脳活動を変化させる訓練を受けた新兵には、失感情症(感情の認識の喪失を特徴とする状態)の軽減が見られることが、180人を対象とした臨床試験から明らかになった。このことを報告する論文が、今週掲載される。

ニューロフィードバック訓練とは、参加者に自らの脳活動のレベルに関する情報を与えて、脳活動レベルを調節するよう訓練するものであり、ストレスに対するレジリアンス(回復力)の改善や、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの精神医学的治療の開発において有望な領域と見なされている。しかし、大半のニューロフィードバック法には、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)などのように、深部脳活動を検出可能な高価で特殊な画像解析装置が必要とされる。

Jackob Keynan、Talma Hendlerたちは今回、脳内情動処理に関与することが知られている扁桃体領域の活動を標的とする、脳波(EEG)に基づくニューロフィードバック法について、最近実施した臨床試験の結果を報告している。ニューロフィードバックで脳波のモニタリングに使用された装置は、fMRIより拡張性が高く、持ち運びが容易である上に安価である。

著者たちは、ストレスを伴う戦闘訓練を受ける新兵180人を以下の3つのグループに無作為に割り付けた。第1のグループの90人は、実験群として、扁桃体の活動を標的とした脳波ニューロフィードバックのセッションを6回受けた。第2のグループの45人は、実験群に厳密にマッチする対照群として、扁桃体を標的としない脳波ニューロフィードバック訓練を受けた。第3のグループの45人は、ニューロフィードバックを受けなかった。実験の結果、扁桃体を標的としたニューロフィードバック訓練のセッションによってのみ、失感情症の軽減が認められた。

著者たちは、今回の結果が、ストレス関連の障害の発生から個人を守るための現実世界での応用方法に道を開く可能性があると示唆している。

doi: 10.1038/s41562-018-0484-3

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