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【健康科学】疾患の非侵襲的治療への超音波の使用

Nature Communications

2019年3月13日

Health sciences: Ultrasound used noninvasively to treat diseases

Nature Communications

齧歯類モデルを使った2つの研究で、超音波を用いた非侵襲的な神経活動の調節、および炎症性関節炎と高血糖症の治療が実証されたことを報告する2編の論文が、今週掲載される。これらの論文では、こうした薬理学的手法以外の手法が将来、炎症性疾患や代謝疾患の治療に使用できる可能性が示唆されている。

神経を刺激する手法は、さまざまな疾患(炎症、糖尿病、消化管疾患など)の治療に使用できる。しかし現行の手法は、埋め込み型電極を必要とし、刺激できるのは大きな神経や皮膚の表面近くの神経に限定されている。

今回Daniel Zachsたちは、マウスの脾臓に非侵襲超音波を毎日照射し、炎症性関節炎の重篤度が低下したことを明らかにしている。またZachsたちは、この治療法によってB細胞とT細胞の集団に変化が生じたことと、B細胞とT細胞を持たないマウスではこの治療法の有効性が低下したことも明らかにした。

一方、Chris Puleo、Vicky Coteroたちのラットモデルとマウスモデルを使った研究では、脾臓に対して超音波を非侵襲的に照射したところ、細菌内毒素に対する炎症反応が低下した。この低下の度合いは、埋め込み型電極装置で迷走神経を刺激する方法(VNS)による低下の度合いに匹敵するものだった。肝臓に超音波を照射する実験では、血糖値の調節に関係する経路が調節され、細菌内毒素への曝露による高血糖(血糖値が高過ぎる状態)を抑制する効果がVNSと同等なことが判明した。またPuleoたちは、超音波を照射した肝臓における応答が、肝臓の中でもグルコース感覚性ニューロンを含むことが知られた特定の部位に照射したときにのみ生じることを見いだした。

これら2編の論文は、神経調節による治療が可能な疾患については、超音波刺激を埋め込み型装置の代わりに使用できる可能性があることを示唆している。ただし、今後さらなる研究が必要であり、現在、関節リウマチ患者に対する超音波の非侵襲的照射の使用を検討するための臨床試験が実施されている。

doi: 10.1038/s41467-019-08750-9

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