【生態学】英国の野生の花粉媒介昆虫の現状
Nature Communications
2019年3月27日
Ecology: Status of Britain’s wild pollinating insects assessed
花粉媒介昆虫であるハチとハナアブの野生種が英国内で占有していた地域の変化を1980~2013年にわたって評価した結果を示した論文が、今週掲載される。この研究報告によれば、これらの昆虫種の3分の1は占有区域数を減らしたが、作物の授粉を担う重要なハチ種の占有区域数は増えていた。
花粉媒介昆虫の減少は広範な地域で食料生産に影響を及ぼすことが懸念されており、花粉媒介昆虫にとっては生息地の減少、殺虫剤の使用、気候変動などが脅威となっている。しかし、花粉媒介昆虫の分布の変化を大規模に評価する研究は行われていない。
今回、Gary Powneyたちの研究グループは、花粉媒介昆虫であるハチとハナアブの野生種(計353種)のデータとモデル化手法とを組み合わせて、これらの昆虫が占めていた1キロメートル四方の区域の割合を1980~2013年にわたって評価した。その結果、この期間中に1区域当たり平均11種(ハチ4種とハナアブ7種)が正味で減少していたことが判明した。また、高地に生息する種が55%減少したことも明らかになった。これに対して、例えば、セイヨウオオマルハナバチ(Bombus terrestris)などの一般的な作物花粉媒介昆虫種は12%増加していた。
Powneyたちは、農地の環境政策は一般的な作物花粉媒介昆虫種に役立っていると考えられるが、農地以外で花粉媒介昆虫が脅威にさらされている状況は変わっていないという見解を示している。Powneyたちは、広範な地域で花粉媒介昆虫の生息地と食料資源を回復させるための新たな管理方法を開発する活動を推進する必要があると主張している。
doi: 10.1038/s41467-019-08974-9
注目の論文
-
12月13日
Nature Medicine:2025年の医療に影響を与える11の臨床試験Nature Medicine
-
12月13日
進化:最古の現生人類ゲノムから、4万5,000年前にネアンデルタールとの混血があったことが判明Nature
-
12月12日
医学:マウスの子癇前症に対するmRNA療法の提供Nature
-
12月12日
進化:ワニはどのようにして皮膚を得たのかNature
-
12月12日
天文学:Firefly Sparkleが初期の銀河形成に光を当てるNature
-
12月10日
加齢:脳の老化に関連する重要なタンパク質の発見Nature Aging