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【神経科学】MDMAの投与によってマウスの社会的報酬学習が再開する

Nature

2019年4月4日

Neuroscience: MDMA reopens social reward learning in mice

Nature

(+/-)-3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA)の単回投与によって、脳の発達における臨界期が再開し、成体マウスが社会的相互作用から得る満足感が大きくなることを報告する論文が、今週掲載される。この知見は、神経発達障害の治療薬開発の一助となり、MDMAが心的外傷後ストレス障害(PTSD)の有用な治療薬となる症例があることを説明する上で役立つ可能性がある。

脳の発達において臨界期は「窓」であり、この時期に環境刺激(例えば言語や音など)に対する脳の感受性が特に高くなる。今回、Gul Dolenたちの研究グループは、マウスの社会的相互作用の臨界期を同定し、臨界期が性成熟期に始まり、成熟した成体になった時に終わることを明らかにした。臨界期は脳の報酬中枢である側坐核でのオキシトシンシグナル伝達の変化に裏打ちされており、臨界期が終わると、マウスの社会的相互作用への欲求が低下し始める。マウスにMDMAを単回投与すると、この「窓」が再び開かれて、オキシトシンシグナル伝達の変化と行動の変化が起こり、こうした変化は少なくとも2週間継続した。

最近、米国食品医薬品局(FDA)は、MDMAを用いた心理療法をPTSDの「画期的な治療法」に指定した。この治療法は、作用機序は解明されていないが、現在、第3相臨床試験が行われている。今回の研究は、MDMAが社会的報酬学習の臨界期を再開させ、精神分析医と患者の関係を深める上で役立つ可能性があることを示唆している。

doi: 10.1038/s41586-019-1075-9

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