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【感染症】ヒトスジシマカの根絶を目指した二重の処置

Nature

2019年7月18日

Infectious diseases: A two-pronged attack on mosquitoes

Nature

侵入性が高く病気を媒介する蚊をほぼ根絶できることが、中国で行われた野外試験で実証された。今週掲載される論文では、蚊の個体数を調節するために雌の不妊化と雄の細菌感染を組み合わせた、環境に優しく費用対効果の高い方法が説明されている。

ヒトスジシマカ(Aedes albopictus)は、世界各地に侵入している蚊で、デング、チクングニア、ジカなどのウイルスの伝播を媒介する。ヒトスジシマカの個体数を従来の手法によって減らすのは難しいことが証明されている。放射線照射によって雄を不妊化してから野生に戻すという昆虫の個体数調節法は、こうした雄の繁殖上の競争力が野生の個体群より劣るため、蚊では十分に成功していない。別の方法として、雄を、共生細菌の一種であるボルバキア属(Wolbachia)細菌に感染させるというものもある。この雄が同じボルバキア属細菌株に感染していない雌と交尾すると、不和合を起こして、卵が育たなくなる。ただし、この方法では、同じボルバキア属細菌株に感染した雌が偶発的に野外に放たれると、その地域の個体群に取って代わり、このボルバキア属細菌株に依存した将来的な個体数抑制が阻害される恐れがある。

今回、Zhiyong Xiたちの研究グループは、野生の個体群において生じる可能性が低い3種のボルバキア属細菌株の組み合わせを新たに作り出し、ヒトスジシマカに感染させた上で、同じボルバキア属細菌株を保有する雌の偶発的放出を避けるために放射線照射を実施し、その際には、雄の繁殖上の競争力が損なわれないよう放射線量を低く抑えた。中国の広州で行われた野外試験では、3種のボルバキア属細菌株に感染した数百万匹のヒトスジシマカが放出され、2年間で野生のヒトスジシマカの個体群がほぼ消失した。野生型ヒトスジシマカの平均個体数は、1年で約83~94%減少し、蚊の放出から最大6週間後まで野生型ヒトスジシマカが検出されなかった。集団遺伝学解析では、残存する少数のヒトスジシマカはおそらく、研究対象外地域から移動してきた個体であることが示された。

doi: 10.1038/s41586-019-1407-9

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