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【生物工学】DNA記憶を持つ物質がウサギの設計図を記憶する

Nature Biotechnology

2019年12月10日

Biotechnology: Material with DNA memory remembers bunny blueprint

Nature Biotechnology

合成DNAにコードされたウサギの設計図を含む材料を使って、3Dプリンターでウサギを作製したことを報告する論文が掲載される。元のウサギに埋め込まれたDNAは解読され、5世代にわたってウサギの複製に用いられた。

世界のデータ量が増大するにつれ、ハードディスクや磁気テープといった従来のデータストレージアーキテクチャーでは、データ要件に対応するのが次第に難しくなってきている。こういったデバイスは限界に達していることから、DNAがデータの長期保存の解決策になるのではないかと考えられている。以前の研究で、DNAの耐久性や保存できる情報量の多さが明らかにされたが、今回、その耐久性を予想もしなかった形で活用するDNA保存の応用例が見つかった。

Yaniv Erlich、Robert Grassたちのチームは、「物のDNA」というストレージアーキテクチャを開発し、変化しない記憶を持つ物質を作製した。この方法を検証するために、著者たちは、「スタンフォードバニー」として知られるコンピューターグラフィックス用の試験モデルの設計図を、DNAに適合したフォーマットにコード化した。次にこの設計図をDNA分子に保存して、それをシリカビーズに封入して生分解性の熱可塑性ポリエステル樹脂に埋め込んだ。この樹脂を使って、3Dプリンターでウサギを作製した。著者たちは次に、このウサギからごく小さな樹脂片を切り取って、そこからDNA分子を解読することによって、ウサギに保存されたDNAを利用して、再びこのウサギを作製することに成功した。こうして、前の世代のウサギから増幅したDNAを次の世代に封入し、情報を失うことなく、5代にわたってウサギを作製できた。第4世代と第5世代の作成は9か月の間を置いて行ったが、それでもDNAの設計図は安定であった。

別の実験として著者たちは、ワルシャワ・ゲットー(ユダヤ人隔離地域)のオネグ・シャバット・アーカイブ(ユダヤ人がナチスの迫害に抵抗して、宗教、文化を伝えるべく収集、秘匿した文書類)についてのビデオをコード化してプレキシガラスに埋め込み、このプレキシガラスで老眼鏡を作製した。封入された情報は、プレキシガラスのごく小さな断片から回収することができた。

著者たちは、この「物のDNA」方式は、情報を隠し持つ日用品の製造に応用可能であり、これで、自己複製する機械にも一歩近付くことになるかもしれないと述べている。

doi: 10.1038/s41587-019-0356-z

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