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生態学:ブタクサの生物学的防除によるブタクサアレルギーの低減

Nature Communications

2020年4月22日

Ecology: Biological control of common ragweed may reduce allergies

Nature Communications

ブタクサ(Ambrosia artemisiifolia)が引き起こすアレルギーには、ヨーロッパの約1350万人がかかっており、年間74億ユーロ(約8900億円)相当の医療費が発生しているという研究結果を報告する論文が、Nature Communications に掲載される。今回の研究では、ブタクサハムシ(Ophraella communa)を用いたブタクサの生物学的防除によってブタクサの花粉の影響を受ける人数とそれに関連した経済的費用を低減できる可能性のあることも示唆された。

外来植物種(例えば、ブタクサ)は、生態系に著しい影響を及ぼし、相当な経済的費用を発生させる可能性があるが、そうしたことが人間の幸福にどのような影響を及ぼすのかは十分に解明されていない。

今回、Urs Schaffnerたちの研究チームは、ヨーロッパの花粉モニタリングプログラムのデータを用いて、2004~2012年のヨーロッパにおける季節的積算花粉放出量のマップを作製し、ヨーロッパ人集団におけるブタクサ感作率を判定した。Schaffnerたちの推定によれば、2013年に予期せぬブタクサハムシの到来があるまでに1350万人が季節性のブタクサ花粉アレルギーの影響を受け、年間約74億ユーロの経済的費用が発生していた。Schaffnerたちは、ヨーロッパにおけるブタクサハムシの好適な生息域でのブタクサハムシの世代数をモデル化し、ブタクサの生物学的防除によってブタクサアレルギーを起こす人数を年間約1120万人に、医療費を年間64億ユーロ(約7700億円)に削減できると予測している。

Schaffnerたちは、今回の研究による公衆衛生費用の推定額が以前に報告された推定額を上回っている点を指摘し、特定外来生物種によって実際に必要となる費用と特定外来生物種の管理による恩恵が過小評価されているという考えを示している。

doi: 10.1038/s41467-020-15586-1

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