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神経科学:無反応患者の脳の言語処理を追跡する

Nature Neuroscience

2020年5月26日

Neuroscience: Tracking language processing in unresponsive patients

Nature Neuroscience

脳の言語処理活動を追跡することで、人間の意識状態を判別できることを報じた論文が、Nature Neuroscience に掲載される。この新知見を用いて、無反応患者の将来転帰を予測できる可能性があるとされる。

以前の研究で、脳が出す信号を調べると、意識喪失の痕跡を見つけ出せる可能性のあることが明らかになっている。また、無反応患者の機能的MRI研究では、自然言語に対する脳反応があったことが報告されている。これに対して、脳波検査(EEG)は、脳動態に対する感度が高いため、言語処理をよりよく評価して、無反応覚醒症候群(UWS)と最小意識状態(MCS)のような意識障害を判別できる可能性がある。

今回、Liping Wang、Xuehai Wuたちの研究チームは、42人のMCS患者、36人のUWS患者、47人の健常対照者を被験者として、音声シーケンスに対する脳の反応を調べた。この実験では、いろいろな言語レベルの音声刺激(単語リスト、語句の追跡、文章の追跡)に対する脳波反応が記録された。

患者と健常対照者のいずれの場合も、脳内で単語の処理が行われたことは明らかだった。また、語句の追跡と文章の追跡は、UWS患者よりもMCS患者の脳内で明白に行われていた。従って、文章の処理に関する脳波データを使えば、UWS患者、MCS患者、健常対照者を区別できる可能性がある。MCS群の患者は、語句単位と文章単位の言語処理をしている際の音声追跡反応と認知ネットワークの経時的動態を示す脳波の活動がUWS群の患者よりも活発で、このことは、さまざまなグループの意識状態の分類に役立つ可能性がある。

著者たちは、脳波に基づいたモデルを用いることで、健常対照者かMCS患者かUWS患者かを高い精度で分類でき、患者の将来転帰を予測できる可能性があると考えている。ただし、脳波データの予測精度を現行の分類基準と系統的に比較するためには、さらなる研究を行い、昏睡の初期段階からその後の回復までに複数回の脳波検査を行う必要がある。

doi: 10.1038/s41593-020-0639-1

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