考古学:陶器製の調理鍋には食習慣の古代史が記録されている
Scientific Reports
2020年8月28日
Archaeology: Ceramic cooking pots record history of ancient food practices
遺跡から出土した陶器製の調理鍋の3つの要素(炭化した内容物の残骸、内部表面上の残渣、陶器の壁面に吸収された脂質)を分析することは、考古学者たちが、古代文明で用いられた料理の習慣を時系列で詳しく明らかにするのに役立つ可能性がある。この知見は、1年間の調理実験によって得られたもので、今週、Scientific Reports で発表される。
Melanie Miller、Helen Whelton、Jillian Swiftが率いる7人の考古学者チームは、1年間にわたって週1回の頻度で、素焼きの陶器製の調理鍋で同じ食材を繰り返し調理した後、最終回の調理だけレシピを変える実験を行い、調理鍋の残渣が、最終回の調理によるものなのか、調理鍋が使用された期間中の調理の蓄積を表しているのかを調べた。レシピには小麦、トウモロコシ、鹿肉などの食材が含まれていた。
陶器製の調理鍋に存在した残渣は、調理された食事に由来する炭水化物、脂質、タンパク質からなっており、この残渣の炭素同位体値と窒素同位体値の化学分析から、それぞれの調理鍋に存在する焦げた食物の残渣は最後に調理された食材のものであり、毎回の調理によって変化したことが示唆された。調理鍋の内部表面に形成され、調理時に食物と最も直接的に接触していた薄い残渣層の化学組成は、それまでに調理された食事の混合物だったが、最後に調理された食事のものに最もよく似ていた。さらなる分析から、脂質は、一定回数の調理を経て陶器の壁面に吸収され、レシピが変わってもすぐには置き換わらず、時間をかけてゆっくりと置き換わり、この調理鍋の使用期間中に調理された食材の混合物が形成されることが示唆された。
考古学者たちは、3種類の残渣を全て分析することで、さまざまな時間スケールで陶器製の調理鍋を使った調理活動を明らかにでき、古代文化で用いられたさまざまな資源を解明して、食事の支度に使用された陶器の寿命を推定できる可能性がある。
doi: 10.1038/s41598-020-70109-8
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