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疫学:COVID-19の拡大を制限するための非医薬品介入を評価する

Nature Human Behaviour

2020年11月16日

Epidemiology: Assessing non-pharmaceutical interventions in reducing COVID-19 spread

Nature Human Behaviour

2020年3~4月にさまざまな国および地域で実施された介入を評価したところ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大を抑えるための強制的ではない非医薬品介入(NPI;効果的なコミュニケーション戦略や政府による支援など)が、より強制的な解決策(ロックダウンなど)と同様に、感染の伝播を遅らせる効果があるかもしれないことが分かった。今回Nature Human Behaviour に報告されたNPIの評価によれば、最も効果的なNPIは、小規模な集会の中止、教育施設の閉鎖、出入国の制限、個人の移動制限、国内のロックダウン、個人用保護具の供給量の増加であることも判明した。

SARS-CoV-2を治療する効果的なワクチンがいまだ存在しない状況において、政府は、ウイルスの拡散を緩和するために、さまざまなNPIを採用している。こうした介入は経済的・社会的影響があることから、どのNPIが最も効果的であるかを明らかにできれば、ステークホルダーは、標的を、伝播率を減少させるための介入に絞ることができるようになると考えられる。

今回Peter Klimekたちの研究グループは、4つの計算手法を使用して、2020年3~4月に79の国および地域で実施された6068件のNPIの効果をモデル化し、SARS-CoV-2の拡散の緩和および感染の再生産数(Rt)の低下に対するNPIの影響の評価した。次に研究グループは、得られた結果について、226か国で実施された4万2151件のNPIに関する2つの外部データベースを用いて検証を行った。4つのいずれの計算手法でも、同じNPI(小規模な集会の中止、教育施設の閉鎖、出入国の制限、個人の移動制限、国内のロックダウン、個人用保護具の供給量の増加)が最も効果的であることが判明した。さらに研究グループは、感染症による負の影響を受けやすい集団に対する政府の支援、食糧支援プログラム、ソーシャル・ディスタンシング(社会的距離の確保)や自主隔離に関するコミュニケーション戦略など、強制的ではないNPIは、より強制的な選択肢(ロックダウンなど)と同様に、伝播率を減少させるのに有効な可能性があることを明らかにした。最も有効性の低いNPIは、接触表面の消毒などの環境的な対策であった。また研究グループは、それぞれの国におけるNPIの有効性は、施策実施の迅速さ、すでに実施されている対策の数、社会経済的・文化的・政治的要因の影響を受けることを見いだしている。

Peter Klimekたちは、COVID-19の拡大を防ぐ特定のNPIは存在しないこと、そしてそれぞれの国に適した、またその国のエピデミックに適合した介入の組み合わせが必要であることを強調している。Peter Klimekたちはさらに、今回のデータは限定的な期間から得られたものであり、各国が制限を緩和したり再度実施したりしていた長期にわたるNPIの影響を評価するためには、さらなる研究が必要であると注意を促している。

doi: 10.1038/s41562-020-01009-0

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