考古学:ネアンデルタール人の親指は、柄付き石器を握ることに適していた
Scientific Reports
2020年11月27日
Archaeology: Neanderthal thumbs better adapted to holding tools with handles
ネアンデルタール人の親指は、現生人類がハンマーを握るのと同じように、石器を握ることによく適応していたことを報告する論文が、Scientific Reports に掲載される。この知見は、ネアンデルタール人にとっては、「精密グリップ」(親指とその他の指の指先に挟むように物体をつかむ方法)が、「パワーグリップ」(ハンマーのような物体を親指以外の4本の指と手の平で包み込み、親指が力を制御して物体をつかむ方法)よりも難しかった可能性を示唆している。
今回、Ameline Bardoたちの研究チームは、3次元解析を用いて、5人のネアンデルタール人個体の親指の動きをつかさどる複数の骨(「大菱形中手骨複合体」と総称される)の間の関節をマッピングし、その結果を5人の初期現生人類の遺体と50人の現代の現生人類の成人から得られた測定結果と比較した。
Bardoたちは、大菱形中手骨複合体の関節の形状と相対的な向きが共変動することを見いだした。これは、ネアンデルタール人と現生人類では親指の反復的な動きが異なることを示唆している。ネアンデルタール人の遺体の親指の付け根の関節は、より偏平で、接触面が小さく、手の側面に沿って配置された親指に適している。この親指の姿勢は、現生人類が柄付き工具をつかむために用いるパワーグリップをネアンデルタール人が日常的に用いていたことを示唆している。これに対して、この関節面は現代の現生人類の親指の方が一般的に大きく、より湾曲しており、これは物体を親指とその他の指の腹で挟み込んでつかむ精密グリップにとって都合が良い。
Bardoたちは、今回解析したネアンデルタール人の形態は力をこめて握るパワーグリップにより適しているが、ネアンデルタール人は精密グリップの姿勢も取れたと考えられ、ただ、そうすることが現生人類より難しかっただろうと述べている。
ネアンデルタール人と現生人類の手の化石の形態を比較することで、現生人類の古代の近縁種の行動や初期の道具の使い方に関する新たな知見が得られる可能性がある。
doi: 10.1038/s41598-020-75694-2
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