考古学:ヒトが食べ残しの肉をオオカミに与えたことがイヌの家畜化の初期段階に寄与したかもしれない
Scientific Reports
2021年1月8日
Archaeology: Sharing leftover meat may have contributed to early dog domestication
最終氷期の終わり頃(2万9000~1万4000年前)、厳しい冬の間に、ヒトが食べ残しの赤身肉をオオカミに与えたことが、イヌの家畜化の初期段階に関係していた可能性のあることを示した論文が、Scientific Reports に掲載される。
今回、Maria Lahtinenたちの研究チームは、単純なエネルギー含有量の計算を行い、2万9000~1万4000年前に人間が狩猟対象にしていたと考えられていて、オオカミの典型的な被食種でもあった動物(ウマ、ヘラジカ、シカなど)の肉のうち、ヒトが食べ残した分のエネルギー量を推計した。Lahtinenたちは、もしオオカミとヒトが厳しい冬に同じ動物の狩猟を行っていたのであれば、ヒトは、オオカミを家畜化するのではなく、競争を減らすために殺していただろうという仮説を立てた。計算の結果、ヒトが捕食していた全ての動物種(ただしイタチなどのイタチ科動物を除く)によってもたらされるタンパク質量はヒトが消費可能な量を上回ることが明らかになり、Lahtinenたちは、ヒトが余り物の赤身肉をオオカミに与えていた可能性があり、それによって獲物を巡る争いが減ったと考えている。
今回の論文によれば、ヒトは、植物性の食物が少なくなる冬に、動物性の食餌に頼っていたかもしれないが、タンパク質だけの食餌に適応していなかった可能性が非常に高く、油脂分が少なくタンパク質の多い肉よりも油脂分の多い肉を好んでいた可能性がある。オオカミはタンパク質だけの食餌で何か月も生き延びることができるので、ヒトは、飼っていたオオカミに余った赤身肉を与えていた可能性があり、それによって過酷な冬期においてもヒトとオオカミの交わりが可能だったと考えられる。余った肉を餌としてオオカミに与えることで、捕獲したオオカミと共同生活をしやすくなった可能性があり、オオカミを狩猟に同行させ、狩猟の護衛にすることで、家畜化過程がさらに促進され、最終的にはイヌの完全家畜化につながった可能性がある。
doi: 10.1038/s41598-020-78214-4
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