教育学:就学率が上がっても習熟度が上がるとは限らない
Nature
2021年3月11日
Education: Progress in learning may not increase with school enrolment
2000〜2017年に全世界で就学率が上昇したが、(共通試験によって測定される)習熟度はそれほど向上しなかったことを報告する論文が、Nature に掲載される。この調査結果は、世界銀行がまとめた新しいデータセットの分析に基づいている。このデータセットには、世界の人口の98%を占める164か国のデータが組み込まれている。/p>
人的資本(組織や国家にとって人々の経験やスキルが有する価値)は、経済発展の重要な構成要素であり、通常、学校教育の指標を代理指標として測定されてきた。つまり、学校にいることが学習につながり、それが人的資本につながると考えられたのだ。学習を測定する取り組みの多くは高所得国を対象としており、これと比較可能な開発途上国での学習指標は存在していない。
今回Noam Angristたちは、世界全体で習熟度の向上を比較できるHarmonized Learning Outcomesデータベースを紹介している。このデータベースには、7種類の試験の結果が含まれており、それぞれの試験が10~72か国をカバーしていて、これらを組み合わせて比較可能なものにしている。試験の点数は、就学レベル(初等教育または中等教育)、科目(算数、科学、読解)とジェンダーで細分類された。Angristたちは、2000〜2017年に生徒の就学レベル(平均就学年数)と就学率は向上したが、習熟度の向上は限定的だったことを明らかにした。例えば、中東・北アフリカでは、初等教育の就学率が2000年から2010年までに95%から99%に上がったが、習熟度は2000年から2015年まで380点前後で推移していた(625点以上は成績が良く、300点以下は成績が悪いとされた)。
モデル化研究からは、2030年までに全世界の初等教育の就学率が100%に達する見込みであることが示唆されているが、習熟度が横ばいの状況が続くのであれば、就学率100%の達成にほとんど意味がないと、Angristたちは主張している。
doi: 10.1038/s41586-021-03323-7
注目の論文
-
12月13日
Nature Medicine:2025年の医療に影響を与える11の臨床試験Nature Medicine
-
12月13日
進化:最古の現生人類ゲノムから、4万5,000年前にネアンデルタールとの混血があったことが判明Nature
-
12月12日
進化:ワニはどのようにして皮膚を得たのかNature
-
12月12日
天文学:Firefly Sparkleが初期の銀河形成に光を当てるNature
-
12月12日
医学:マウスの子癇前症に対するmRNA療法の提供Nature
-
12月10日
加齢:脳の老化に関連する重要なタンパク質の発見Nature Aging