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古生物学:小惑星が地球に衝突する前に恐竜の多様性は減少し始めていた

Nature Communications

2021年6月30日

Palaeontology: Dinosaurs in decline before asteroid impact

Nature Communications

小惑星の衝突を原因とする大量絶滅事象が起こる前に、非鳥類型恐竜種の衰退が約1000万年間続いていたという見解を示した論文が、Nature Communications に掲載される。今回の研究結果は、恐竜の絶滅に関する新たな手掛かりになる。

メキシコのチクシュルーブに大型の小惑星が衝突したことが、6600万年前の非鳥類型恐竜の大量絶滅の原因だったことについては、幅広い合意がある。しかし、この小惑星が衝突する前に恐竜類が衰退し始めていたかに関しては論争があり、現在の化石記録を使ってこの点を評価することは困難だった、

今回、Fabien Condamineたちの研究チームは、1600点の恐竜化石を分析し、恐竜の6つの科(アンキロサウルス科、ケラトプス科、ハドロサウルス科、ドロマイオサウルス科、トロオドン科、ティラノサウルス科)の種分化速度と絶滅速度を評価した。その結果、非鳥類型恐竜の多様性が約7600万年前に減少し始めたことが分かった。Condamineたちは、この多様性の減少が、古い種の絶滅速度の上昇に関連しているという見解を示しており、これは、恐竜の進化的新奇性が失われたことや、これらの恐竜が状況の変化に適応できなかったことを示していると考えられる。また、Condamineたちは、この変化に関係する生態学的要因と物理的要因の評価を行って、白亜紀後期(1億~6600万年前)の全球的な気候寒冷化が恐竜類の衰退に寄与した可能性があることを明らかにしており、ハドロサウルスが他の草食恐竜種との競争に勝利した結果、草食恐竜の多様性が減少したことも関係している可能性を指摘している。

Condamineたちは、こうした要因が組み合わさったことで、チクシュルーブでの小惑星衝突後の恐竜の回復能力が損なわれ、恐竜の絶滅に寄与したと結論付けている。

doi: 10.1038/s41467-021-23754-0

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