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神経科学:マインドワンダリングとマインドブランキングの予測

Nature Communications

2021年6月30日

Neuroscience: Predicting daydreaming and mind blanking

Nature Communications

睡眠への移行と関連付けられる神経活動パターンである「徐波」の発生を用いて、対象者がマインドワンダリングやマインドブランキングを起こすかどうかや、環境に対してどのように反応するかを予測できることを報告する論文が、Nature Communications に掲載される。マインドワンダリングとは、課題を行っている時にその課題と無関係な事柄をあれこれと考えてしまうことをいい、マインドブランキングとは、意識の流れが止まり、頭の中が真っ白になることをいう。今回の研究は、徐波が、いろいろな意識状態を理解する上で重要だと考えられることを示唆している。

注意力散漫は、目が覚めている時に起こることがあり、マインドワンダリングやマインドブランキングに関連している。注意力散漫は、疲れている時に起こることが多いため、「局所的睡眠」という神経現象と結び付いている可能性がある。局所的睡眠とは、脳内の特定の領域が徐波睡眠の兆候を示し、その他の領域が覚醒している状態をいう。この結び付きは、断眠した齧歯類とヒトで実証されているが、十分な休息をとったヒトでは実証されていない。

今回、Thomas Andrillonたちの研究チームは、十分な休息をとった成人26人に、平均1.7時間にわたって顔や数字の画像に注意力を集中させる持続的注意課題を行わせながら、脳波検査によって脳全体の電気的活動を記録した。参加者は、特定の表情や特定の桁数の数字が表示された時にボタンを押すよう指示され、集中力を維持した。そして、参加者は、30~70秒の間隔でランダムに課題の遂行を中断させられ、その時の精神状態が「課題に集中している」「マインドワンダリングを起こしている」「マインドブランキングを起こしている」のいずれであるかと、眠気のレベルを回答した。これとともに瞳孔のサイズが測定され、課題の遂行成績が評価された。その結果、前頭葉領域で徐波が発生した場合にはマインドワンダリングや衝動的行動が、頭頂葉などの脳の後方領域で徐波が発生した場合にはマインドブランキングや反応性低下が起こることが見いだされた。Andrillonたちは、異なる意識状態に先立って、異なる脳領域において共通の神経シグネチャーが発生するという考えを示している。

Andrillonたちは、今回特定された徐波は、睡眠時に観察される徐波に非常によく似ているが、両者に共通の根本機構があることを確認するためには、頭蓋内記録などの他の手法が必要になることを指摘している。

doi: 10.1038/s41467-021-23890-7

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