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がん:世界貿易センターの崩壊という大惨事のファースト・レスポンダーでは血液がんに関連する変異のリスクが高い

Nature Medicine

2022年3月8日

Cancer: Higher risk of blood cancer–associated mutations in World Trade Center disaster first responders

Nature Medicine

世界貿易センタービルの崩壊の際のファースト・レスポンダー(現場に最初に入った消防隊員や医療従事者など)では、そこにいなかった消防隊員などに比べて、血液細胞中にがんのリスクを上昇させる変異が増えていることが明らかになった。

血液細胞には、「クローン性造血」と呼ばれる現象の一部として、加齢に伴って変異が蓄積していく。血液細胞の変異量の上昇は有害で、血液がん、心血管疾患などのリスクの上昇につながる。

A Vermaたちは、世界貿易センタービルの崩壊現場に存在した発がん物質となり得るものへの環境曝露の結果として、ファースト・レスポンダーでクローン性造血に関連する変異のレベルが上昇したかどうかを調べた。そして、世界貿易センタービル崩壊現場に出動したファースト・レスポンダー481人(消防隊員429人、救急医療従事者52人)から採取した血液試料を用いて、血液がんで変異していることの多い237の遺伝子について解析を行った。世界貿易センタービル崩壊現場に出動したこれらのファースト・レスポンダーでは、その現場にはいなかった消防隊員(対照群255人)に比べ、年齢、性別、人種/民族の違いを考慮しても、変異が検出される被験者の割合が明らかに高かった(調べたファースト・レスポンダーの10%、対照群では6.7%)。これらの知見と符合するように、世界貿易センタービル崩壊現場から採取された微小粒子状物質をマウスに投与すると、骨髄細胞で変異が誘発された。

著者たちは、これらの知見は、世界貿易センタービル崩壊の際のファースト・レスポンダーでは、通常の老化で生じると予測される数を超えて、変異量が増加していることを示す直接的な証拠であると結論している。この変異量の増加は、がんなどの病気に結び付く可能性がある。

doi: 10.1038/s41591-022-01708-3

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