スポーツ科学:首の歪みを測定する新しいウエアラブルセンサーで脳震盪の疑いを判定できるかもしれない
Scientific Reports
2022年6月24日
Sport science: New wearable sensor to measure neck strain may detect potential concussion
首の後ろに貼るセンサーパッチが新たに開発され、アメリカンフットボールや柔道といった衝撃度の高いスポーツにおける脳震盪のリスク予測に役立つ可能性が生まれた。この研究結果を報告する論文が、Scientific Reports に掲載される。この小型デバイスは、柔軟性があり、ダミー人形を使った実験で、突然の首の歪み(例えば、むち打ち症)を検知した。
コンタクトスポーツ(相手選手との身体接触を伴うスポーツ)における衝突事故と衝突以外の事故では、首が急激に動いて、脳震盪が起こる可能性がある。脳震盪の予測に役立つデバイスは、すでに存在しており、その一例が、選手のヘルメットの中に設置して、動きを検出する加速度計ベースのセンサーだ。しかし、このデバイスは、大きくて扱いにくく、装着者の頭上でヘルメットが動くと、誤った値が表示されることがある。
今回、Nelson Sepúlvedaたちの研究チームは、物理的な接触や圧力が加えられたときに電気エネルギーを発生する熱可塑性材料(フェロエレクトレットナノジェネレーター)のフィルム層を用いた新しいパッチセンサーを開発した。このデバイスにおいて生成される電気信号は、首の物理的歪みに比例し、首が突然動いた時の加速度と速度(脳震盪を予測するための2つの重要なマーカー)を推定するために使用できる。
次に、このセンサーパッチを検証する実験が行われ、頭部に加速度計ベースのセンサーとジャイロスコープを組み込んだダミー人形の首の後ろにセンサーパッチを貼った。そして、むち打ち症のシミュレーションとして、ダミー人形を61 cmの高さから落下させ、センサーパッチの出力が、頭部内に埋め込まれたセンサーの測定結果と強い正の相関(90%)を持つことが判明した。そして、このパッチセンサーデバイスの読み取り感度の個体差が平均10%未満だったと報告された。
このデバイスは、むち打ち症の測定に使用できる可能性があり、さらに開発研究を進めて、脳震盪の検出に役立つかもしれないとSepúlvedaたちは結論付けている。ただし、運動選手とスポーツ選手でさらなる検証を行うことが必要とされる。
doi: 10.1038/s41598-022-12266-6
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