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犯罪学:米国主要都市における警察による取り締まりのバイアスを予測する

Nature Human Behaviour

2022年7月1日

Criminology: Predicting police enforcement bias in major US cities

Nature Human Behaviour

米国の主要8都市における、犯罪に対する警察の対応には、地域の社会経済的状態によるバイアスのある可能性があることが、Nature Human Behaviour に掲載されたモデル化研究から明らかとなった。この知見は、犯罪のパターン変化を人工知能で調べることで明らかとなったものであり、社会経済的に恵まれない地域では、特に犯罪が急増した場合に、比較的裕福な地域に資源が引き抜かれて、警察が向ける注意が不当に低くなる可能性があることを示唆している。

事象レベルの犯罪予測は、将来起こる犯罪のタイミングと場所を事前に察知できる可能性があり、警察や政府機関で多用されるツールとなっている。一方、そうした警察の行動は、特に多様なコミュニティーにおいてバイアスを拡散したり成文化されたりする恐れがあると懸念されており、実地におけるそうした取り組みの現実の成功例はこれまで限られていた。

Ishanu Chattopadhyayたちは今回、米国の主要8都市(シカゴ、フィラデルフィア、サンフランシスコ、オースティン、ロサンゼルス、デトロイト、ポートランド、アトランタ)で得られたデータを使用して、犯罪を高い精度で予測できるアルゴリズムを開発し、そして実際に警察行動のバイアスを解析した。例えばシカゴでは、このアルゴリズムは犯罪事件を20%未満の偽陽性率で予測することができ、既存の予測アルゴリズムより優れていた。しかしながら、モデルで予測された警察の行動を解析した結果、裕福な地域と比較して、それほど裕福ではない地域における犯罪に対する警察の対応は鈍く、法執行そしておそらく行動指針にバイアスのあることが示唆された。

研究チームは、今回得られた知見の利用には注意を要すべきであると述べており、同アルゴリズムを警察行動の指針として使うことを勧めていない。News & ViewsではAndrew Papachristosが、警察および政府機関が犯罪予測モデルの使用を将来的に中止する見込みはほとんどないと強調している。むしろ、「そうした技術を、警察の行動を監視するために使用する次の大きなステップは、そうしたツールを警察の追跡に使用するのは誰か、また組織内の問題や公衆への乱用が検出された場合に、どういった種類の予期しない結果が現れるかを明らかにすることなどである」と示唆している。

doi: 10.1038/s41562-022-01372-0

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