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人類学:英国人の祖先を調べる

Nature

2022年9月22日

Anthropology: Investigating British ancestry

Nature

アングロ・サクソン時代に大勢の人々が現在のドイツ、オランダ、デンマークから北海を渡ってブリテン島に移住したことにより、中世初期のイングランドの人口に占めるヨーロッパ系の人々の割合が最大76%まで上昇した可能性があることを報告する論文が、Nature に掲載される。この研究知見は、ヨーロッパ大陸からの移住が中世初期のイングランドの社会の形成に影響したことを示唆している。

イギリス諸島とアイルランドの歴史には、文化が大きく変化した時代がいくつもあり、その1つがローマ時代に続く時代で、言語、居住形態、製造、建築、農業などが変化した。しかし、こうした文化的移行にヨーロッパ大陸からの移住がどの程度関係していたのかを理解することは依然として難しい。これまでの全ゲノム研究は、英国人の祖先を評価するために現代の英国人に着目してきたが、現代の英国人は遺伝子構成の分かっていない古代集団の代表例ではない可能性がある。

今回、Stephan Schiffels、Duncan Sayerたちは、現代の英国の人口動態を調べるために、西暦200年から1300年の間と年代決定されたヨーロッパ北西部の人々460人(イングランドで生活していた278人を含む)の考古学的データとゲノム全体の古代DNAを調べた。その結果、中世初期のイングランドで、中世初期と現代のドイツとデンマークの住民と近縁関係にあるヨーロッパ大陸北部系の人々が増えたことが判明した。分析対象となったイングランド東部の人々は、その祖先の最大76%がヨーロッパ大陸の北海地域の出身者だった。その後発生した人口統計学的事象によって、ヨーロッパ大陸北部系の人々の比率が低下し、鉄器時代のフランスで発見された人々に類似したヨーロッパ南西部の人々のような新しい構成員が加わったことが判明した。また、移住民を祖先に持つ女性は、地元民を祖先に持つ女性よりもブローチなどの副葬品と一緒に埋葬された可能性が高いことも分かった。一方、武器を持っていた男性の場合は、地元民を祖先に持つ者の割合と移民を祖先に持つ者の割合が同程度だった。

Schiffelsたちは、現代の英国には、中世初期の頃よりも低いレベルではあるが、ヨーロッパ大陸北部系の人々がかなり残っており、アングロ・サクソン人の移住による人口統計学的影響が永続しているという見解を示している。

doi: 10.1038/s41586-022-05247-2

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