科学政策:学術誌編集者の論文発表歴を吟味する
Nature Human Behaviour
2023年1月17日
Policy: Examining the publication record of academic editors
1000誌を超える学術誌の分析から、科学系学術誌の編集者の約12%が、自身の論文の少なくとも5分の1を自らが編集者を務める学術誌で発表していることが明らかになり、Nature Human Behaviourに掲載された。今回の調査はまた、対象サンプル中の編集者の男女不平等についても調べており、女性の編集者はわずか14%にとどまっていることが判明した。
研究者は、キャリアを重ねるために論文を発表しなければならない。学術誌の編集者(自身が現役の研究者であることが多い)は、編集過程で重要な役割を果たしており、投稿論文の採択可否の最終決定に関わっていることが多い。過去の調査では、いくつかの研究分野の編集者の論文発表のパターンが注目されていたが、男性と女性の編集者間に見られる、また編集者とその共同研究者たちとの間に見られる論文発表の違いに関する理解は十分ではなかった。
Bedoor AlShebliたちは、2019年までの50年以上にわたる、主要出版社の1167の論文誌、15の専門分野の編集者10万3000人のデータをまとめた。著者たちはそのデータを基に、編集者2万人および編集長1600人の論文出版歴を再構成し、編集者たちが、いつ、どの雑誌において自身の研究を発表したかを調べた。その結果、編集者の12%が自身の全論文の少なくとも5分の1を、また6%が少なくとも3分の1を、自らが編集者を務める雑誌に発表していることが明らかとなった。著者たちはまた、データセットにおいて編集者8万1000人の性別を推定できたことから、編集チームのジェンダーバランスについても調べた。その結果、女性編集者の数はここ数年増えつつあるが、対象サンプルにおいては全編集者のわずか14%、編集長の8%にとどまることが判明した。著者たちはさらに、女性と比較して、男性は編集者に就任した後に論文を発表する割合が大きく上昇することを見いだした。
Natureに掲載されたNews & ViewsでMolly Kingは、「今後の研究では、学術誌の方針の違いと、またそうした違いが、編集者の自己出版パターンに及ぼす影響について注目すべきであり、編集者の選択や論文の発表に偏りが生じることを避ける策を講じることで、学術界はジェンダー平等の達成に近づき、研究の透明性を高めることができるだろう」と述べている。
doi: 10.1038/s41562-022-01498-1
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