心血管疾患:人工甘味料は心血管疾患に関係する?
Nature Medicine
2023年2月28日
Health: Artificial sweetener may be linked to cardiovascular disease events
広く使われている人工甘味料のエリスリトールが心血管系疾患事象に関連している可能性が示された。
人工甘味料は、食品や飲料で砂糖やカロリーの摂取量を減らすために使われており、糖尿病や心臓病などの代謝疾患患者に砂糖の代用品として勧められることが多い。人工甘味料は一般に、規制機関によって安全と認められているが、長期にわたる使用が健康に及ぼす影響の研究はほとんど行われていない。エリスリトールは砂糖の代替品として広く使われており、体内ではほとんど代謝されない。天然産物であり、果物や野菜に低レベルで含まれているが、加工食品にはこれよりずっと高いレベルで添加されている。
S Hazenたちは、現在心臓リスクを評価中で3年間にわたる転帰のデータが得られる1157人で研究を開始した。血中の化学物質の分析により、人工甘味料に類似した複数の化合物のレベル、特にエリスリトールのレベルが、3年間の追跡期間を越えて、その後の心臓発作と卒中のリスク上昇と関連していることが分かった。この関連は、本人の希望で心機能評価が行われている、これとは無関係な米国と欧州のコホート(前者のn = 2149、後者のn = 833)でも確認された。次いで、エリスリトールを全血または血小板に加えると凝血が加速することが明らかになり、これは動物モデル研究で確認された。さらに、8人の健康なボランティアで、前向き介入研究としてエリスリトール30 gで甘みをつけた飲み物を摂った後で血漿中の濃度を測定したところ、全員のエリスリトールレベルが血栓形成リスクが増加するとされる閾値濃度以上に上昇し、それが2〜3日間持続することが分かった。
これらの知見は、エリスリトールのレベル上昇と血栓形成リスクの上昇とのつながりを示している可能性があると、著者たちは考えている。しかし、今回調べたコホートには心血管系のリスク因子を持つ人が多く含まれるので、健康と考えられる被験者をもっと長期間にわたって追跡しても同様な結果が見られるかどうかは、これから明らかにする必要があるとも述べている。
doi: 10.1038/s41591-023-02223-9
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