生体力学:昆虫の翅のヒンジは筋肉によって制御されている
Nature
2024年4月18日
Biomechanics: The muscular control of the insect wing hinge
画像化技術、機械学習によるモデル化、ロボットハエを組み合わせた研究によって、昆虫の翅のヒンジの仕組みが明らかになったことを報告する論文が、今週、Natureで発表される。この複雑なヒンジを分析した研究は、昆虫の飛翔の進化につながった生体力学的イノベーションを洞察する手掛かりとなる可能性がある。
昆虫類は飛翔能力が進化した最初の動物だった。昆虫の翅は、他の飛翔動物(翼竜類、鳥類、コウモリ類など)とは異なり、四肢から進化したのではなく、翅と胴体をつなぐ独自の複雑なヒンジを備えている。このヒンジは、筋肉と相互作用して翅の羽ばたき運動を引き起こす5つの複雑な構成要素(硬皮)が相互に接続して出来上がった構造系だ。翅の基部にある4つの重要な硬皮は、外部から可視化することが困難で、非常に素早く動くため鮮明に撮影することが難しいことから、翅のヒンジの機構は謎に包まれていた。
今回、Michael Dickinsonらは、実験装置の中で飛翔するショウジョウバエについて、硬皮を制御する全ての筋肉のリアルタイムカルシウムイメージングと、翅の動きを捉えるための3D超高速ビデオ撮影を同時に行った。今回の研究では、7万2000回以上の翅の羽ばたきのデータが使用され、機械学習法を用いて硬皮の筋肉が翅の動きを制御する仕組みのモデルが考案され、微小なロボットハエを使用して硬皮の筋肉の空気力学的役割が測定された。そして、自由飛翔するハエの物理学ベースのシミュレーションを用いて、このモデルの検証が行われた。このシミュレーションでは、硬皮の筋肉の活動を微調整することで、自由飛翔するハエの全ての既知の飛行形が再現された。
以上の結果を総合して、説得力のある物理学ベースのヒンジのモデルが得られ、さらなる実験によって検証できる一連の仮説も得られた。さらに、Dickinsonらは、ショウジョウバエの神経接続の詳細なマップが明らかになれば、ショウジョウバエの飛翔制御回路をより深く理解するために役立つと期待している。
doi: 10.1038/s41586-024-07293-4
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