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人類学:持久走の進化の軌跡を探る

Nature Human Behaviour

2024年5月14日

Anthropology: Exploring the evolution of endurance running

Nature Human Behaviour

狩猟のための持久走は、他の伝統的な狩猟法と同程度に効率的であった可能性のあることを明らかにした論文が、Nature Human Behaviourに掲載される。今回の知見は、モデル化と民族歴史学的記述や民族誌の記述に基づくものであり、持久力追跡仮説を裏付けるものである。

ヒトの運動筋肉は、主に疲労耐性を有する繊維からなり、長時間の活動で生じる代謝熱を汗として排出する能力を有することから、哺乳類の中でも独特な筋肉である。このため一部の人類学者は、そうした形質が、獲物を長い距離にわたって追い掛ける能力に対する選択を受けて進化してきたとする「持久力追跡仮説」を提唱している。しかし、こうした持久力追跡による原生人類の狩猟に関する報告はほとんどなく、また、走ることはそもそもエネルギー的にコストが高いことが分かっている。

今回、Eugène MorinとBruce Winterhalderは、持久走による狩猟の帰還率を推定するモデル化を用いて、持久走による熱量の増加が他の狩猟法と同程度であることを見いだした。この知見は、走ることが食料を得るための有益な策であった可能性を示唆している。

著者らはまた、1500年代初頭から2000年代初頭までの民族誌と民族史学の文献のデータベースを作成して分析することで、持久走が狩猟に果たす役割について調べた。その結果、ヒトが狩猟に持久力追跡を用いた事例が世界272カ所から約400件見いだされ、この戦略がこれまで考えられていたほど珍しいものではなかったことが示唆された。こうした持久力追跡には複数の狩猟者が参加し、平原などの開けた環境や森林バイオームなどの多様な生態系で行われていた可能性がある。

著者らは、こうしたタイプの狩猟は、おそらく更新世(260万~1万1700年前)のヒト族に利用されていた戦略の1つで、人類進化に何らかの役割を果たしていた可能性があると示唆している。ただし、今回の研究は、近年の歴史の民族誌の記述(大半が100年前以降に書かれたもの)に基づいたもので、これらは人類の過去の進化過程を直接的に語るものではないとも指摘している。

doi: 10.1038/s41562-024-01876-x

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