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メンタルヘルス:治療抵抗性のうつ病に経口ケタミン錠が有効

Nature Medicine

2024年6月25日

Mental health: Oral ketamine tablet effective against treatment-resistant depression

Nature Medicine

治療抵抗性のうつ病(TRD)患者で行われた第2相臨床試験の結果、ケタミンを徐放性の錠剤にすることで、ケタミンの静脈内投与や鼻腔内投与に関連する副作用が軽減され、うつ病の再発を防げることが明らかになった。このことを報告する論文が、Nature Medicineに掲載される。

ケタミンはうつ病の治療に使用でき、通常は静脈内投与されるが、最近の数例では鼻腔内噴霧も行われる。しかし、これらの方法で投与すると、直後に解離や血圧上昇、頻脈といった副作用が起こることがある。

今回、Paul Glueらは、ケタミンの新しい経口製剤R-107の安全性と効果を評価するため、臨床試験を設計した。この錠剤は自宅での服用が可能で、ケタミンをTRD患者の血中によりゆっくりと送り込むことができる。第1相臨床試験には合計231人のTRD患者が参加し、治療に応答する患者を特定するために、R-107 120ミリグラムの投与を5日間受けた。治療応答者は、モンゴメリー–アスベルグうつ病評価尺度(うつ病エピソードの重症度を評価するために使用される質問票)の点数が50%以上低下した場合とした。

168人の治療応答者が第2相試験へと進み、4通りの用量のいずれかでR-107投与を継続するか、偽薬錠剤の投与を受けるかに無作為に振り分けられた。その結果、13週間後に、偽薬投与群の患者は71%がうつ病を再発したのに対し、R-107 180ミリグラムを週2回投与された患者では43%だった。さらに、R-107投与群では、血圧の変化は全く見られず、鎮静の報告や解離があったのもごく少数であった。

Glueらは、ケタミンの徐放性錠剤の経口投与は、多くの副作用が減少するという点でも、また社会生活における摂取の利便性改善という点でも、鼻腔内投与や静脈内投与に比べて利点がありそうだと結論付けている。

doi: 10.1038/s41591-024-03063-x

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