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神経科学:一嗅ぎでその香りを識別することができる

Nature Human Behaviour

2024年10月15日

Neuroscience: One sniff can identify that whiff

Nature Human Behaviour

人間は、一嗅ぎで一連の異なる匂いを識別することができ、その速度は以前考えられていたよりも約10倍速いことを報告する論文が、Nature Human Behaviourに掲載される。

人間の嗅覚(嗅ぐ能力)は、反応が最も遅い感覚であると考えられることが多いが、その理由の一つとして、急速な化学変化によって引き起こされる嗅覚知覚の変化を測定することの難しさがある。正確なタイミングで匂いを放出すること、そして高い時間分解能で神経活動を捉えることは難しく、これまで嗅ぐ速度や匂いを識別する能力の正確な推定を妨げてきた。

Wen Zhouらは、異なる匂いを順番に提示し、人間が匂いを識別する能力を推定するために、人間の鼻に匂いを高い精度(18ミリ秒)で届けることができる装置を作成した。著者らは、229人の被験者に、リンゴのような、タマネギのような、レモンのような、および花のような匂いを持つ化学化合物を含む2種類の匂いを、特定の順序または逆順で提示し、匂いと匂いの間の時間間隔を変えながら、その違いを識別するよう求めた。別の実験では、被験者は匂いの混合物の各成分との類似性を評価した。

著者らは、2つの匂いを1つの順序で提示し、その後、60ミリ秒の間隔を空けて逆の順序で提示した場合、参加者はその違いを識別できることを発見した。通常、一嗅ぎは1–3秒かかる。また、2つの匂い成分の提示の間に100–200ミリ秒の時間差を設けた場合、参加者は、混合物の匂いが後者の成分よりもむしろ前者の成分により似ていると報告することが多いことも発見した。これは、匂いの成分が鼻に届く順序が、匂いの特徴を特定する上で重要であることを示唆している。

著者らは、人間の嗅覚はこれまで考えられていたよりもはるかに速く、色の知覚とほぼ同等の速度であると示唆している。そして、著者らは、使用された匂いの混合物の成分は、一般的に構造と匂いの質の両方において異なると指摘している。また、著者らは、構造が類似している匂いを識別することは、より困難であるかもしれないと示唆している。
 

Wu, Y., Chen, K., Xing, C. et al. Human olfactory perception embeds fine temporal resolution within a single sniff. Nat Hum Behav (2024). https://doi.org/10.1038/s41562-024-01984-8

doi: 10.1038/s41562-024-01984-8

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