注目の論文
発展途上国向けの改良コムギ
Nature Biotechnology
2012年3月12日
Improved wheat for the developing world
コムギのある品種に、土壌塩分に対する耐性を導入したとの報告が寄せられている。コムギを土壌塩分濃度の高い乾燥地域、半乾燥地域で栽培することの多い発展途上国では、この改良コムギが特に有用だろう。 Matthew Gillihamたちは、以前に同定されたコムギ遺伝子の1つで、コムギの現在の商業品種には存在しないが祖先に当たる塩分耐性種には存在する遺伝子を詳しく調べ、これが、根から葉へと運ばれた水からナトリウムを効率よく取り除いて塩分濃度の高い土壌に対する植物の耐性を高める輸送体の遺伝子であることを明らかにした。この古代品種を商業品種と交配してハイブリッド品種を作成し、野外試験でこの品種を評価したところ、高塩分土壌での穀粒収量が最大25%上昇するが、低塩分土壌での生産性は落ちないことが明らかになった。 このコムギは、通常の交配によって作られているので、遺伝子組み換え作物ではない。必ずしも遺伝子組み換え植物を作らなくても、栽培化されていない植物で見つかった遺伝的多様性を活用して現在の農作物の改良が行えるというバイオテクノロジーの可能性が、このコムギによって明らかになった。
doi: 10.1038/nbt.2120
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