注目の論文
【鳥インフルエンザ】ヒト培養細胞での鳥ウイルス複製に必要な適応変異のメカニズム
Nature Communications
2012年5月2日
Avian flu: Adaptive mutations permit replication in cells in culture
鳥インフルエンザウイルスH5N1がヒト培養細胞内で複製するには、このウイルスの核外輸送タンパク質と特定の酵素の変異が必要なことを報告する論文が、今週、Nature Communicationsに掲載される。今回の研究で得られた知見は、鳥のウイルスがヒトの細胞内で複製する過程の解明を進めるものといえる。
ヒト由来H5N1分離株でポリメラーゼ遺伝子と核外輸送タンパク質遺伝子の変異が見つかっているが、これらの変異が、このウイルスのヒト細胞内での複製能に寄与しているのかどうかはわかっていない。今回、M Schwemmleたちは、ヒト由来H5N1分離株の配列を用いて、ヒト宿主における適応によって生じたと考えられる変異を取り除いた。すると、このウイルスは、鳥の細胞内で複製できたが、ヒトの培養細胞内では複製できなかった。次に、ポリメラーゼ遺伝子で見つかった変異をウイルスに再び導入したところ、ヒト細胞内でのウイルスRNAの複製不全が一部補償された。一方、核外輸送タンパク質の変異を導入した場合には、ヒト培養細胞内でのウイルスRNAの複製がさらに促進された。Schwemmleたちは、核外輸送タンパク質の変異がヒト培養細胞内での鳥ポリメラーゼの活性を高めると結論づけた。
今回の研究で得られた知見は、鳥ウイルスが哺乳類の培養細胞内で複製するように適応する過程の解明に役立つものといえる。
doi: 10.1038/ncomms1804
注目の論文
-
7月11日
古代ゲノミクス:疫病に襲われた新石器時代の農民たちNature
-
7月10日
バイオテクノロジー: 培養肉の風味を改善するNature Communications
-
7月9日
微生物学:自閉症スペクトラム障害は子どもの腸内細菌叢の変化と関連するNature Microbiology
-
7月9日
ウイルス学:牛H5N1インフルエンザの感染と伝播Nature
-
7月4日
考古学:チベット高原でデニソワ人が活動していたことを示す動物の骨Nature
-
7月4日
古生物学:オオサンショウウオに似た捕食動物Nature