【動物行動】ブチハイエナの社会的匂いに細菌が果たす役割
Scientific Reports
2012年8月31日
Animal behaviour: A bacterial role in spotted hyenas’ social scents
細菌が、そのツンと鼻をつく匂いを通じて、ブチハイエナの集団における社会的結束を仲介する役割を果たしていることを調べる研究が行われた。その結果を報告する論文が、今週、Scientific Reportsに掲載される。
ブチハイエナは、クラン(群れ)単位で生活している。クランとは、約40~80個体からなる複雑な社会集団のことだ。ブチハイエナは、さまざまな触覚、視覚、音声、化学シグナルを伝達する行動によって、クラン内とクラン間での社会的関係を仲介している。その一般的な一例が「ペースティング」という、匂いづけの一種で、ブチハイエナが草の茎に酸っぱい匂い(「ペースト」)を残す行為だ。この強烈な匂いは、おそらく細菌発酵の副産物だと考えられ、ブチハイエナの集団特異的な社会的匂いの原因は、その匂い嚢に生息する集団特異的な細菌群集だとする仮説が提起されていた。しかし、技術的な制約のためにこの仮説を検証することは難しかった。
今回、K Theisたちは、次世代分子配列解読技術を用いて、4つのクランに由来する16頭の雌のブチハイエナの匂い嚢に生息する細菌群集の解析を行い、微生物に高度の多様性が認められ、同じクランのブチハイエナと異なるクランのブチハイエナでは、前者の方が、微生物群集の類似性が高い傾向のあることを報告した。
発酵性細菌は、その近縁種が匂いを発することが知られているが、今回の研究では、ブチハイエナの匂い嚢に多様な発酵性細菌の群集が存在し、この細菌が発する匂いが、ブチハイエナのクランにおける集団特異的な社会的匂いを構成することが明らかになった匂いと同じものであることが判明した。今回の研究では、このような微生物の多様性が、ブチハイエナの集団特異的な匂いの原因として十分なことが示唆されているが、個別のペースト試料の匂いと細菌プロフィールが共変することを確定的に明らかにするためには、今後の研究の積み重ねが必要となる。
doi: 10.1038/srep00615
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