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【生物学】多発性硬化症の遺伝的手がかり

Scientific Reports

2012年10月25日

Biology: Genetic clues to multiple sclerosis

Scientific Reports

複雑な神経変性疾患である多発性硬化症の遺伝的易罹患性の約30%が、全ゲノム関連解析(GWAS)アレイで同定された高頻度な遺伝的多様体によって説明できることが明らかになった。この研究結果は、多発性硬化症の易罹患性において稀な遺伝的多様体が重要な意味をもつ可能性を明確に示している。詳細を報告する論文が、Scientific Reportsに掲載される。

多発性硬化症(MS)は、中枢神経系の炎症性疾患で、若年層成人が罹患する最も一般的な神経疾患だ。その発症と進行には、遺伝的要因と環境的要因の寄与があると考えられている。単体で多発性硬化症の易罹患性に最も強力な寄与をしているのが主要組織適合複合体(MHC)であることが、これまでの研究で判明しており、これよりも影響の小さな複数の座位もGWASによって明らかになっていた。

今回、C Watson、S Ramagopalanたちの研究チームは、多発性硬化症の易罹患性において高頻度GWAS多様体が果たす役割をもっと詳細に調べるため、英国の大型症例対照コホートから得られた一般公開の遺伝子型データを用いて、多発性硬化症の易罹患性の変動に対する高頻度GWAS多様体の寄与を包括的に評価した。ここでは、ゲノムワイドな有意水準に達するリスク座位だけでなく、遺伝子型判定に用いられた一塩基多型(SNPとも呼ばれる、DNA上の一塩基の変異)全部の寄与分を解析する方法が用いられた。その結果、現在のGWASアレイによって同定された遺伝的多様体が、多発性硬化症の遺伝の約30%の原因となっており、6番染色体上のSNPだけで約8%を占めており、MHCの大きな寄与を反映している。原因不明の部分については、GWASで同定された原因多様体と高頻度多様体のゲノム内での不完全な結びつきを反映したものである可能性が非常に高いと研究チームは考えている。

doi: 10.1038/srep00770

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