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脳卒中の治療の改善

Nature Medicine

2008年6月23日

Improving stroke therapy

Nature Medicine

血栓を「溶解する」酵素がかかわって、有害な出血を引き起こす仕組みが明らかになった。血栓が引き起こす脳卒中は、血栓を「溶かす」組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)を使って治療できるが、これによって脳出血という厄介な副作用が生じることがある。

    D Lawrenceたちは、tPAを脳内に注射すると脳の血管の透過性が高まることを明らかにした。これは、血小板由来増殖因子-CC(PDGF-CC)と呼ばれる分子が活性化されるからで、PDGF-CCを注射すると血管に対してtPAと同様の作用を示した。一方、PDGF-CCに対する抗体をtPAと同時に注射すると、血管の透過性の上昇が抑えられた。

    またLawrenceたちは、PDGF-CCのこの作用が、脳血管の内壁を覆う細胞に存在するPDGF-α受容体の活性化に依存していることも発見した。PDGF-α受容体のアンタゴニストで、ある種の血液癌の治療に使われるイマチニブ(グリーベック)をマウスに投与すると、脳卒中後のtPA投与にともなう脳血管の透過性上昇が抑えられ、脳出血が減少する。

    これらの結果から、PDGF情報伝達系が血液脳関門の調節に関与していることがわかり、イマチニブが、脳卒中後のtPA投与によって起こる合併症を防ぐ薬になる可能性が示唆される。

doi: 10.1038/nm1787

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