注目の論文

血液幹細胞には編集が必要

Nature Immunology

2008年12月8日

Blood stem cells require editing

Nature Immunology

血液幹細胞を正常に保つために必要な酵素が同定された。この酵素、ADAR1を不活性化すると炎症性メディエーターの生産が増えて細胞の生存に影響が現れ、成熟前の死につながるという。この発見は、ADAR1が個体を慢性炎症や自己免疫疾患から守っている可能性があることを示している。

S Orkinたちは、ADAR1をもたない胚から血液幹細胞をとり、マウスの血液系を再構築した。この酵素は、発現中の遺伝子から作られるRNAすなわちメッセンジャーRNAの情報を編集することが知られている。重要なことだが、ADAR1はRNA分子の二本鎖領域にだけ作用し、遺伝暗号の文字をいくつか書き換える。このように「編集された」RNAは、コードするタンパク質が変化したり、機能が変化したりすることがある。

驚いたことに、血液幹細胞にはADAR1が必要で、これがないと未熟なまま死んでしまうという。ADAR1欠失動物では、体内の警報物質で全身性の炎症の原因となるインターフェロンの発現量が理由なく増加し、血液細胞の形成不全がさらに深刻になる。Orkinたちは、ADAR1が宿主ゲノムに侵入して隠れているウイルス類似RNAを見つけ出す働きと慢性的なインターフェロン発現の害から生体を守る働きをするらしいと考えている。

doi: 10.1038/ni.1680

英語の原文

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