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脳への秘密の出入り口

Nature Immunology

2009年3月23日

A secret doorway into the brain

Nature Immunology

免疫細胞が血液脳関門を回避して脳へと入り、それがさらに他の免疫細胞の脳への侵入を許して病気を引き起こす仕組みが明らかになった。この発見は、自己免疫疾患である多発性硬化症(MS)の解明に大きな意味がある。

多発性硬化症やそのマウスモデル(実験的自己免疫性脳脊髄炎)に関連した病変が免疫細胞によるものであるとする研究結果をめぐって、論争が起きていた。F Sallustoたちは、免疫細胞が2回に分かれて脳に入ることを明らかにし、論争の解決に大きく近づいた。まず、ホーミング受容体CCR6を発現する細胞が脈絡叢(脊柱上部の血管の多い領域。ここの細胞は、脳脊髄液からの血液供給を分割する働きをする)を通って入る。これらの免疫細胞は、脳の内側に入ると脳組織への攻撃を開始し、血液脳関門の変化の引き金を引いて血液脳関門を漏出性にし、ほかの免疫細胞が脳に侵入できるようにする。これが病気の発症に結びつく。

重要なのは、同様のことがMS患者の脳組織で起こっていることが判明したことである。CCR6を発現するこれらの免疫細胞を標的にすればMS患者の治療法に結びつくかもしれないが、さらに研究が必要である。

doi: 10.1038/ni.1716

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