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統合失調症にみられる霊長類特異的な変異カリウムチャネル

Nature Medicine

2009年5月4日

A primate-specific potassium channel in schizophrenia

Nature Medicine

あるカリウムチャネルの霊長類特異的な変異体が、大脳皮質の機能、認知、ニューロンの生理、統合失調症のリスクなどに影響するとの報告が寄せられている。このチャネル変異体の同定によって、統合失調症治療の新しい標的ができるかもしれない。

脳の機能には統制のとれたニューロンの発火が不可欠であり、統合失調症の場合には、この統制がとれなくなっている。D Weinbergerたちは、霊長類に特異的で脳に多く、ニューロンの発火を変化させるカリウムチャネルKCNH2を同定した。海馬は認知機能に不可欠な脳の領域だが、統合失調症の患者の場合、この海馬でのKCNH2の発現が、対照群に比べてはるかに亢進していた。

またWeinbergerたちは、367の家系、1,158の血縁関係のない症例、1,704人の対照群を解析し、KCNH2中の一塩基多型と統合失調症の関連を発見した。リスクに関連する多型は、知能検査の成績や認知処理の速度の低さ、記憶変化、海馬におけるKCNH2変異体mRNAレベルの上昇の指標となる。

Weinbergerたちは、ニューロンでKCNH2チャネル変異体を過剰に発現させると、急激な非活性化を起こすカリウム電流が誘導され、高頻度のニューロン発火が持続する。統合失調症の神経学的異常は、これによって説明できる可能性がある。

doi: 10.1038/nm.1962

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