注目の論文
力を利用する触媒
Nature Chemistry
2009年4月7日
Catalysts use the force
機械的な力で活性化される触媒が、Nature Chemistry(電子版)で報告されている。このようなやり方で触媒を活性化できることは、熱や光ではなく機械的応力に応答する新しい自己修復材料につながるかもしれない。
R Sijbesmaらは、それぞれが長い高分子鎖を含む2つの配位子の間に金属(銀またはルテニウム)イオン1個が挟まれた化合物を合成した。これらの化合物を溶液中に溶解させて超音波をかけると、気泡がつぶれることにより高分子鎖が伸びる。この動きにより発生した機械的な力によって、それぞれの分子が2つの別個のフラグメントに分裂する。つまり、弱い金属-配位子結合の一方が切断されることにより、金属イオンと結合したままのフラグメントと、金属イオンが存在しないフラグメントに分かれる。
重要なのは、超音波によって2つに分裂するまで親化合物はどれも触媒活性を示さないことである。銀化合物の場合、金属のないフラグメントがエステル交換反応(バイオ燃料の合成に利用される反応)を触媒しうる。ルテニウム系化合物の場合、触媒活性を示すのは金属をもつ配位子であり、これによりオレフィンメタセシス反応を介して小分子と高分子の両方が合成されうる。これらの分子は、燃料を改善する添加剤などさまざまな製品を製造するときに利用される。
関連のNews & Viewsの記事では、J RathoreとA Nelsonが、今回のSijbesmaらの研究は「新しい触媒活性化法を提示するものであり、オンデマンドで触媒活性を示す他の新触媒の創出を促す可能性がある」と述べている。
doi: 10.1038/nchem.167
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