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扁桃体の社会化

Nature Neuroscience

2009年12月21日

Socializing the amygdala

Nature Neuroscience

不平等感に関連して現れる性格の違いは、情動の自動処理に重要な脳領域である扁桃体の活動を変化させる。Nature Neuroscience(電子版)に発表される研究は、そうした性格の違いは前頭前野の違いが原因であると示唆した以前の見解を否定している。

人が他人と富を分け合うのを好む度合いは、確固とした性格特性である。向社会的な人は、概して他人に利益を与えるように働き、自分の富を最大にしたいと思いながら他人も同じ富をもつことを望む。しかし個人主義者は、自分の富を最大にしたいと思う一方、他人が入手できる富の量には無頓着である。

人がこの種の決断に至る方法に関しては議論が続いているが、自動性の「ボトムアップ」反応は自分の報酬しか考慮せず、この利己的な衝動を抑えるためには「トップダウン」型の制御(前頭前野で働くと考えられている)が必要であるという1つの説がある。

春野雅彦(玉川大学)とC Frithは、向社会的な人と個人主義の人について、2つの報酬(自分と相手に1つずつ)に対する欲求に脳がどう応答するかを観察し、分配課題を行うときの「トップダウン」処理と「ボトムアップ」処理という考えを検討した。向社会的な人は不公平なシナリオを好まず、それ相応に応答した一方、個人主義者の選択は物事の公平性には左右されなかった。研究チームは、この2群の人々で扁桃体の活動が異なることに気づいた。向社会的な人では、報酬の不平等性の増加と扁桃体の活動の増大が相関していた。この結果から、不平等性に対する嫌悪という向社会性の特徴は扁桃体の活動と結びついたもので、利己的な衝動に対する「トップダウン」制御によって決まるのではないと結論している。

doi: 10.1038/nn.2468

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